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井口資仁引退表明。憧れた3人の選手と未来を託す内野手。その功績を追う

プロフェッショナルにふさわしい井口資仁の素顔

井口資仁が憧れた3人

 千葉ロッテマリーンズの井口資仁が、今季限りでの現役引退を表明した。
 今年43歳を迎える現役最年長野手の決断。

「ファンに1試合でも多くユニフォーム姿を見てもらいたいから」

 会見で、交流戦明けの時期に表明した理由をそう語った彼の野球人生を、一言で表すなら“エリート街道”がふさわしい。

 国学院久我山高で甲子園出場。青山学院大では、大学選手権で優勝し、全日本メンバーの一員として、アトランタ五輪で銀メダルを獲得した。
 ドラフト1位で福岡ダイエー(現ソフトバンク)ホークスに入団し、2度の日本一。メジャーリーグに移籍し、シカゴ・ホワイトソックスでワールドシリーズ制覇。日本人選手として、初めて、日本シリーズとワールドシリーズを制す偉業を成し遂げた。さらに、日本球界復帰後には、マリーンズでも日本一になっている。
 華やかで輝かしい足跡だ。

 

 その素晴らしい野球人生で井口は、3人のプロ野球選手の影響を受けてきた。
 中学・高校時代の憧れは、元中日ドラゴンズの立浪和義だった。父親がドラゴンズファンだったので、中日の試合を見る機会が多く「高校を卒業したばかりなのに、レギュラーとしてプロと対等にプレーできる姿に衝撃を受けた」という。立浪が、走攻守三拍子そろったタイプだったことも、井口の理想の選手像にマッチしていた。

 大学時代は、青学大の先輩でもある小久保裕紀が歩んだのと同じ道を辿ることを目標とした。青学大在学中に、唯一の大学生選手としてバルセロナ五輪に出場した小久保は、井口にとって立浪と並ぶ憧れの存在。井口も小久保と同じように、在学中に全日本チームに選出され、子供のころから「プロ野球選手になる」という目標とともに抱いていた「五輪に出場する」という夢をかなえた。

 3人目は、元ソフトバンクホークス監督の秋山幸二だ。秋山は現役時代、類稀な身体能力に裏打ちされたレベルの高いプレーぶりから、「最もメジャーに近い日本人選手」と言われていた。結局、メジャーリーガー秋山は誕生しなかったが、その秋山が現役を引退する際に、井口に「(メジャーに)挑戦してみたかったなぁ」と漏らしたことがあったという。

「僕は後悔だけはしたくなかった」

 アマチュア時代の国際舞台での経験を通して、彼のメジャーリーグへの興味は芽生えていったが、実際にメジャー移籍を決断する際に、秋山の一言が後押しになったことは間違いない。

次のページ影響を与えた落合博満と松井秀喜

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田中 周治

たなか しゅうじ

1970年、静岡県生まれ。東京学芸大学卒業後、フリーライターとして活動。週刊誌、情報誌などにインタビュー記事を中心に寄稿。また『サウスポー論』(和田毅・杉内俊哉・著/KKベストセラーズ)、『一瞬に生きる』(小久保裕紀・著/小学館)、『心の伸びしろ』(石井琢朗・著/KKベストセラーズ)など書籍の構成・編集を担当。現在、田中晶のペンネームで原作を手掛けるプロ野球漫画『クローザー』(作画・島崎康行)が『漫画ゴラクスペシャル』で連載中。


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