コロナ報道でテレビが言わない不都合な数字【元芸人・作家の松野大介】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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コロナ報道でテレビが言わない不都合な数字【元芸人・作家の松野大介】

コロナ騒動を悪用するテレビ、ビジネス、世界


 「東京都、367人感染者数最多更新!」。東京都が30日に発表。テレビ(ワイドショーやニュース報道)は連日、感染者数を報じている。コロナにおけるテレビの煽り報道について評論を寄稿し続ける元芸人の作家・松野大介氏が、テレビが伝えない数字で、日本式インフォデミックをユニークに解説。


◼︎日本式インフォデミックとの闘い

 ワイドやニュース報道で、「検査数過去最多!5818」と報じる番組はほぼない。4月頃の約10倍は増えたから、当時の東京の陽性率約1530%だと8001500人は感染者数がいく。しかし今は68%台あたりを推移。7月31日の時点で重症者は16名、7月の死亡者は10人以下と少ないので触れず、あくまで感染者数をセンセーショナルに報じる。

「感染者数の積み上げ」でパニックを誘う手段も目につく。パネルに大きく表示されるのは国内の累計感染者数約34809人(NHKまとめ7/31午前0時)であり、退院数約24179人(同)を引いた〃現在の感染者数〃10630人を言うことはない。   

テレビを信じる層は、総数や「過去最多」というキャスター・専門家の発言に反応し、怯えてしまう。  

 しかし何割かの視聴者が「検査が増えた」「感染してない曝露も多い」など気づくと、テレビも言わざるを得なくなるので、テレビに惑わされないために、テレビが触れない知識が必要だ。こういう日本式インフォデミックとの闘い。私は専門家じゃないので、コロナとは違う数字も含めた。

◼︎抗体保有率0.1%で、第二波  

 5月に、過去に新型コロナに感染した人の割合がわかる抗体検査の結果が東京都で0.6%と出た時、それまで「人を見たらコロナと思え」とか「ニューヨークは2週間後の東京です。地獄になります」と煽ってきた「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)の出演者は、「流行がきてなかった」と言った(私はズッコケた)。当番組は私が5月に書いたように、不正映像や不適切発言で謝罪した番組なので、その場で言うことを変える印象がある。 厚労省の抗体検査では抗体保有率0.1%。つまり都民約1400万人のうち約1万4000人しか感染していなかった結果が出た。

 抗体は失うという可能性もあり、あくまでその時期の検査データだが、欧米の感染拡大国とは圧倒的に少ない感染数と死亡者数だった。

 しかしテレビはいつの間にか、「流行してなかった」3~4月を第一波と名付けはじめ、「第二波がくる」と言い出した。感染拡大国の第一波よりはるかに小さい波なのに。

 検査が増えて陽性者が増え始めた7月頭からは4月の感染数をマックスに見立てたグラフを作成し、「第一波の感染数に近づいている」「今日の東京は4月を超えて最多!」と報じ始めた。その間、この抗体保有率0.1%を述べる番組はあっただろうか。

◼︎世界の感染者数ランキング  

 外務省のホームページの7/30までの国別の感染者数累積(上位10カ国及び中国・日本)のグラフ(画像1参照)。400万人超の米国の数字を正しく入れるため、40万人あたりの感染大国も下のほうになり、3万人超の日本はグラフの底辺をほぼまっすぐ伸びている。(これで「第二波」とか呼ぶのは苦しんでいる他国に失礼だと、個人的に思う)

 

 

 

松野大介
【画像1】参考図表「外務省 海外安全ホームページ」

 同日、全ての国で感染総数ランキングを「Googleニュース」で見ると、日本は55位。上の5ケ国は50位からアルメニア、アフガニスタン、ガーナ、キルギス、スイス。そして日本。1つ下にアゼルバイジャン。

 日本のニュースで報じられる外国の映像やデータはイギリス、イタリア、ブラジルなど。そして日本もそうなると専門家が言っていたニューヨークといった感染拡大地域。近い感染数の先の6ケ国に触れる番組はないだろう。感染拡大国を例にとると、日本も同じレベルの感染と錯覚する視聴者が現れるのか?

 テレビは東京がニューヨークになる危険として論じる時があるが、逆にもしニューヨークが今の東京のように7月末時点の感染者約3千人、重症16人、1ヶ月の死亡者10名程度ならどうしてるかは触れない。(個人的には、普通に暮らしてると思う) (ちなみに日本は人口総数が11位だから、感染率は55位からかなり下がるかもしれない)

◼︎インフルエンザ  

 私がテレビ報道に疑問を持ったきっかけは、インフルエンザの数字にまったく触れないからだ。誰もが知る感染症と比較するのがわかりやすいし、他国ではテレビでも比較していた(当然のこと)。

 5月頃、あるワイドショーが、「今年はコロナ流行のおかげでインフルが減りました」と言ったが、数字には触れなかった。確かに減った。4月の段階で今シーズンは去年同時期より約450万人減り、約730万人。これに触れたら、「日本じゃインフルエンザのほうが桁違いだ!」と気づかれる。

 感染者数は曝露という陽性者が含まれたり、検査のやり方にも左右されるが、死亡者数は感染者数より正確性がかなり高い。  

 コロナによる死亡は1007人(NHKまとめ 7/31午前0時)。

 インフルエンザの死亡数を表わしたグラフ【画像2参照】では、流行時は毎週400人超で死んでいる。2~3週でコロナを超える。年間1万人が亡くなるシーズンもある。高齢者や疾患のある人の死亡が多いのはコロナと同傾向だが、インフルエンザは小さい子供が毎年多く亡くなる。

松野大介
【画像2】参考図表「日本にPCR検査は必要か」

 

 この事実は高齢な視聴者もわかってきたが、「コロナだけは感染したくない」と怯えるのは、インフォデミックのせいだろう。

 世界のコロナによる死亡者は現在約67万人、インフルエンザは例年2550万人死亡と言われる。

◼︎交通事故死  

 昨年の交通事故は負傷者46万人。死亡者3215人。これでも毎年1万人超死んでた30年前より激減。日本のコロナと違い、大勢の子供が毎年死んでいる。だが車に乗るのを自粛したり、ディーラーが休業することはなく、車と共存している。

 感染症と並べてはナンセンスだが、そろそろコロナと共存しないと、テレビ業界以外の経済で多くの死亡者が出る。

◼︎《最後に》テレビが決して言わないテレビ関係者の言い分

 幸い日本は感染拡大国にならなかったのに、4月の人々の不安を利用して商売をするテレビと、それに影響されるマスコミ全体。

 私の報道評論を読んだワイドショーの関係者から以下のメッセージをいただいた。(番組名や役職がわかる箇所は割愛)

「松野さんの指摘は判ってるんですが、ある程度、こんな数字(番組で使ってるパネル)をベースにしないと、ほんと庶民は動かない。いや、データ見せてもわからないんです。松野さんが思ってる以上に視聴者は本当にリテラシーが低い。異常に低い。それはもう諦めてます」

 作ってる側がそんなこと言ったらいかんと思うが、私が知る限り、これでも良心的なテレビ関係者だ。

 ウィルスは科学的データが重要。人々が正しく対策できるために、テレビは煽りをやめて正しく説明すべし。テレビを真剣に観てる今なら、観る側のリテラシーは上がると思う。

◼︎追加

 配信直前の東京都の発表で、新型コロナの感染者で6月末までの都の死亡者325名の平均年齢は79.3歳で、大半は糖尿病、高血圧、腎疾患など基礎疾患を持っていたとのこと。ワイドやニュースがセンセーショナルに報じると思いたい。

 

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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