北朝鮮の特殊部隊、恐るるに足らず。しかしミサイルは日本を「完全に射程圏内」
【北朝鮮の軍事力】を軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏が徹底解説1/3
●日本も「射程圏内」に入っている!
トオル…あれ? 北朝鮮ってもっとミサイルを持っていなかったっけ? 「ムスダン」や「テポドン」とかってどうなったんでしたっけ?
黒井…「ムスダン」は実験で失敗ばっかりしていますし、「テポドン」はおそらく実戦配備されていないと思います。加えて、テポドンは宇宙ロケットのような打ち上げ場から発射するため、発射する何日も前からその兆候を掴むことができます。いざ戦争が始まったらその打ち上げ場はまっさきに壊されてしまうでしょうから、実質的には「戦力外」と言えますね。
シズカ…つまり、実戦配備されているのはノドン、スカッドERってことね。
黒井…ノドンは90年代から実戦配備されていて、射程1300㎞でほぼ日本全土が狙えます。現在、200発くらいあるとみられます。スカッドERは比較的新しいミサイルですが、おそらくすでに実戦配備されています。射程は1000㎞で、西日本が射程に入ります。数は不明ですが、数十発はあると思われます。
トオル…でも、よくミサイル実験に失敗しているイメージもあるし、なんとなくだけど大丈夫なんじゃないの? 平和ボケですか?
黒井…ノドンは何度も実験を行って成功しています。加えて、ノドンの自走発射基は50基あると推定されていますから、あくまで理論上ですが50発一斉に発射することは可能。ミサイル実験でいうと、日本にとってさらに悪いニュースもあります。
トオル…すでに暗いニュースでいっぱいです……。
黒井…ノドンやムスダン、スカッドERの燃料は“液体燃料”を使用しています。液体燃料は腐食性が高く、また構造が複雑なので故障を避けるために燃料を注入してから運ぶことはできません。そのため、発射直前に燃料を注入しますが、早くても1~2時間かかってしまう。運が良ければ、注入中にアメリカ軍が発見し破壊することもできる。
トオル…それでさっきおっしゃった、「悪いニュース」ってなんですか?
黒井…北朝鮮は、新しく「北極星1」と「北極星2」というミサイルの実験に成功したのですが、これに使われているのは“固体燃料”なんです。液体燃料と違い、発射直前に注入する必要がなく、穴蔵などに隠しておいていきなり打つことも可能なのです。つまり、事前に発見することが難しく非常に厄介な存在です。北極星1は潜水艦発射型なので実戦配備するには実戦的な潜水艦の開発・運用が必要ですが、陸上発射型の北極星2はこの5月に2回目の発射実験が成功し、北朝鮮は量産と実戦配備化を宣言しています。こちらの射程は1200km以上ですから、日本列島の大部分がほぼ覆われます。
トオル…ひえ~。
シズカ…なるほど……日本は完全に射程圏内に入っていることを自覚しないといけないわね。