【街金は見た!】借金バンザイのぼくに待っていた「奴隷生活」という代償!!——多重債務者の現実
【多重債務の現実】ぼくと街金②
日頃見えてこない生活金融の現場。『ぼく、街金やってます』の著者であり、現役街金経営者のテツクル氏の実話をもとにバラ色の20代から暗黒の20代後半へと変わるお話しをする。
多重債務者の現実。それを「見続け、貸し続け、回収する」街金の現実。
債務者と債権者の壮絶なドラマをお届けします。
■ズブズブ奴隷生活のはじまり
ドアを開けてくれた恐ろしい強面お兄ちゃんと同居の金貸し生活がはじまりました。強面も24時間一緒にいると慣れるもんです。
朝、どう見ても金融車のベンツを運転して、おじさんを迎えに行きます。
おじさんは毎朝、後部座席でスポーツ新聞を広げてどこかに電話をします。
「巨人3点、中日1点、ヤクルト1点」
会話の意味を理解するまで数日要しました。
事務所に着くとまず掃除です。
なぜか金貸しにはキレイ好きな人が多くて、ちょっとした埃が残っていてもキレられる、ものすごく神経をすり減らす作業でした。
同居人のお兄ちゃん以外の従業員は、全員ぼくを虫扱いです。
債務者ですから当然なのですが、おじさんの水揚げ愛人とか、ジャンキーラッパーお兄ちゃんとか、街で地べたに座ってそうな双子のお兄ちゃんたちに虫扱いされる生活。
「クソラッパー死ね、ゴミ双子揃って死ね、ブサイクキャバ嬢捨てられろ」
脳内ループです。
でも、そんなポジションを逆転するチャンスはすぐやってきました。
従業員はぼくよりバカしかいませんでしたから、パソコン使えるだけで別階級です。
エクセルに入力した債務者情報を条件で並び替えできるようにしただけで、我が社の頭脳扱いです。
「おまえにパソコン買ってやるから帰ってから客の情報入力しろ」とおじさんが愛人連れてパソコンを買いに行きました。
クロムハーツのショッパーと一緒に持って帰ってきたでかいダンボール。
「ノートパソコンがええんやろ?」
で、買ってきたのが、キーボードが折りたたみ式になった、大きなデスクトップパソコン。
確かに一見うすいけど、ノートじゃないです……。
ぼくは毎日これを持ち運ぶことになりました。
我が社の頭脳の噂が広がり、グループ会社のお偉いさんが頼みたいことがあると次々会いに来るんです。
エクセルの基礎の基礎でトップランカーになれる世界。
クソラッパーと愛人は陰でぼくの悪口を言い、ゴミ双子はあからさまに掌返ししてきました。
このとき知ったのは、おじさんの会社は50社で構成される金貸しグループの1社に過ぎず、グループをまとめる統括部署があり、会長と呼ばれる王様が存在すること。
統括部署に集まる多重債務者リストを50社に振り分けて貸付け、返済期日が迫るとほかの会社が貸付けして、すでに貸した分を回収する。
はい、システム金融です。闇金です。
当時はまったく理解してなくて、ただお金が飛び交う異様な世界、程度の認識でした。
50のグループ会社は、毎月王様に100万円を「統括システム使用料」という意味のわからない名目で上納する決まりがあったそうです。
それと別に、
「おまえんとこ優先で新しい債務者リスト使わせちゃる」
で数百万を取られる、という話も聞きました。
単純計算で月収5000万円の王様は、中洲でも王様でした。
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『ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実』
著者:テクツル
東京・池袋で街金を営む著者のもとには、さまざまな多重債務者がやってくる。そして返すあてもないまま借金を重ねていく。そんな彼らの、悲しくも爆笑せずにはいられないさまざまなエピソードを面白おかしく、しかし赤裸々に、街金ならではの視点で紹介。
ほかにも、ブローカー、詐欺師、悪徳業者、反社など、日常生活では出会うことのない人々が続々登場。今まであまり語られることのなかった街金コラムも満載。あなたの知らないお金の世界が見えてくる!