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【街金は見た!】ぼくとあなたが落ちた借金の穴、底なし沼——「ガラ悪いんですけど……」街金で就職&返済の日々

【多重債務の現実】ぼくと街金③

◼︎最悪です。福岡より最悪です

 普通の会社を想像していました。
 仕事帰りにみんなで飲みに行って、上司の愚痴で盛り上がって、かわいい女子社員もいたりして、社内恋愛とかあって、ノルマ未達のやつ励ましたりとかして。
 
 みんなすごいガラ悪いんですけど……福岡と全然変わらないんですけど。
 仕事終わりの飲み会はありました。ほぼ毎晩ありました。
 飲みに行ったら高確率でケンカするやつしかいませんでした。
 従業員同士、ほかの客、店員、通りすがりの人。
 尾崎豊の世界、誰かのケンカの話にみんな熱くなり。毎朝恒例です。
 
 新人が買った高級靴を、マサカリ投法で不忍池に投げ込むやつらでした。
 カラオケボックスで「ビールピッチャー10‼ ダッシュで!!!」とか注文してビールかけするやつらでした。
 くるぶしくらいまでビールが溜まった部屋で、似てない桑田佳祐とか唄うやつらでした。
 気持ち悪くなって部屋から飛び出し、トイレまで我慢できず、廊下にぶちまけるやつらでした。
 知らずに通ったほかのお客さんが踏んで滑ってぬれてるのを見て、爆笑するようなやつらでした。お客さん、泣いてました。おじさんなのに。
 コットンクラブで踊る嬢に、半裸で絡んでボーイにつまみ出されるやつらでした。
 泥酔して爆睡してる上司の腹に顔描いて、「腹話術!」で大爆笑できるやつらでした。上司の背中の不動明王はちょう怒ってました。
 
 最悪です。福岡より最悪です。
 そんな最低な街金生活と並行して、おじさんの債権回収もしなければいけません。
 某社を訪問すると、先客がいました。よくあることです。
 ガン詰めされてる社長と、ザ・闇金の3人組。
 数人いた事務員さんは視界を前方10センチくらいにできる能力があるようです。
 ぼくに気づいてくれません。
 
 超絶高利貸しの人って、すぐテーブルの上に足をあげて背もたれギーコギーコするんですけど、靴が汚いとか、合皮じゃね? とか、突っ込まれ要素を自ら提供するアレ、何なんでしょうか。
 
「あのーうちも集金なんですけど」
「あぁ⁉ ワシらがいるの見えてんのに言ってんの? 見えてないの? なぁ?」
「ぼくに絡んでもしょうがないんすけどね……待ってます」
 社長が助けてって視線を送信し続けてきます。
 いや、ぼくも集金に来てるんですけど。

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金融業

20代より金融業に携わる。福岡と東京で修行し、現在、池袋で金融業(街金)を経営。この道20年を超えるベテランで、自分が金融業に入るきっかけを書いた自叙伝『ぼくと街金』(note)が好評を博す。Twitterアカウント:@tetukuruixi


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  • 2019.08.02