【街金は見た!】借りる側の論理——他人の不動産を担保にする男《抵当権の順位は問わず貸します!》
【テツクル半生記⑥】あのころ、ぼくは、若かった。
日頃見えてこない生活金融の現場。『ぼく、街金やってます』の著者であり、現役街金経営者のテツクル氏の実話をもとにバラ色の20代から暗黒の20代後半へと変わるお話しをする。
多重債務者の現実。それを「見続け、貸し続け、回収する」街金の現実。
債務者と債権者の壮絶なドラマをお届けします。
■他人の不動産を担保にする男
ぼくはお金を貸すとき、原則として不動産を担保に入れてもらいます。
担保があれば、お金を返せなくなっても不動産を売らせれば回収できます。
不動産を担保にするときの抵当権には順位がありますが、あまり気にしません。大丈夫です、回収します。そこが街金の力の見せどころですから。
自分がお金を借りるんだから、普通は担保に差し出すのは自分名義の不動産です。でも、中には他人の不動産を担保にする人もいます。自分では不動産を持っていなかったり、あるいは持っていても担保にするのがイヤな場合に、他人の不動産を自分の借金の担保にするんです。
他人の土地です。他人の家です。
ぼくらは貸したお金に利息をつけて返してくれればそれでいいので、喜んで貸します。でも、ほとんどの場合、ちゃんとお金を返してもらえないので、担保の不動産を売らせたり、取り上げることになります。
無償で自分の不動産を提供してくれる、そんないい人が世の中にはたくさんいます。
そして、そういういい人を利用して、お金を借りまくる人も世の中にはたくさんいます。
Aさんを連れてお金を借りに来たBさんも、そういう人でした。
Aさんはアパートを3棟持っている大家さんです。70歳くらいだと思います。
一方のBさんは不動産屋です。高級住宅街の駅前で昔からやっている、いわゆる地場の不動産屋。地主の人たちからアパートやマンションの管理を任されています。
Bさんは、Aさんの持っているアパート1棟を担保として、ぼくにお金を借りに来ました。繰り返しますが、担保不動産の所有者はAさん、お金を借りるのはBさんです。
いったいなんで、自分の不動産を他人の借金のカタにするのか。
ちっとも理解できません。
Aさんが何か弱みを握られているのか。
「今度、私が手がける事業がうまくいけば、すごく儲かるんだけど、ちょっとだけ資金が足りないんだ。協力してくれない? お礼はたんまり」
Bさんの素晴らしい話術に、実は欲深いAさんが乗ってしまって担保を提供してしまうのか。いずれにしても、Bさんは特殊能力を備えているんだと思います。ぼくはBさんのこと、「担保提供の魔術師」と呼んでいます。
さすがAさんのような優良資産家が持っている不動産だけあって、権利関係はとてもきれい。ぼくが1番抵当を取れるんです。
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いま、NOTEでテツクルさんの漫画絶賛連載中!
【マンガ版】
『ぼく、街金やってます』第4話
IT社長と籠城合戦!(後編)
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『ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実』
著者:テクツル
東京・池袋で街金を営む著者のもとには、さまざまな多重債務者がやってくる。そして返すあてもないまま借金を重ねていく。そんな彼らの、悲しくも爆笑せずにはいられないさまざまなエピソードを面白おかしく、しかし赤裸々に、街金ならではの視点で紹介。
ほかにも、ブローカー、詐欺師、悪徳業者、反社など、日常生活では出会うことのない人々が続々登場。今まであまり語られることのなかった街金コラムも満載。あなたの知らないお金の世界が見えてくる!