【街金は見た!】恥も外聞もない「鋼のメンタル」なおじさんたち《トンデモブローカーさん列伝》
【テツクル半生記⑧】あのころ、ぼくは、若かった。
◼︎鋼のメンタルのツワモノたち
この手の愉快なおじさんはたくさんいます。
頼まれてもいないのに、勝手に他人の家の査定を依頼してくるおじさんもいます。
「テツクルさん、この物件査定してほしいんですけど」
「現地見ないと正確に言えないけど、このくらいかな」
査定額を聞いたおじさんは、おもむろにその家を訪ねます。
その家の所有者とおじさんは、一面識もありません。まったくもって赤の他人です。
ピンポーン。
「はい? どちらさま?」
「この家を担保に、ウン百万円貸してくれるところがあります。借りませんか?」
「……えっと??」
「いま、ノンバンクから借りてますよね? 借り換えしても少しお手元に残りますよ、すぐ紹介しますから!」
ブチッ!
おじさんたちの鋼のメンタル、ハンパじゃありません。
おじさんたちは、前面に出たがります。商談を仕切りたがります。この案件はおれがまとめた、と言いたいからなんでしょうか。
不動産の所有者とぼくを会わせてくれればすぐに終わる話を、介在してる何人ものおじさんを経由して伝言ゲームをするので、一向に進まないし、内容が変わってしまったりします。船頭が多いと船が山に登ってしまうように、仕切りたがるおじさんが多いと案件は簡単に座礁します。
そんなおじさんたちですが、奇跡的に難易度の高い案件をまとめてくることがあります。いくつもの権利が複雑にこんがらがった不動産の案件をまとめる奇跡が生まれたりするんです。
まとまらない不動産はない、ということでしょうか。
ぼくも若いころは、こういうおじさんたちを迷わず粉砕していました。イライラしてました。
でも、多くのブローカーおじさんたちと出会い、数度の奇跡を目の当たりにしてきて、いまではおじさんたちの多頭飼いにあこがれています。
話を聞くだけなら、何もリスクないですし、がんばるおじさんたちがかわいらしく見えてくるようになるんです。おじさんたちの適当な話を笑ってきいてあげられる余裕が生まれるんです。
これからも、おじさんたちが送ってくるFAXを愛でながら、いつか運んでくる奇跡を待ちたいと思います。
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テツクルさんがマンガになった!
【マンガ版】『ぼく、街金やってます』
第5話 弱肉強食! ザギンでシースー!
『ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実』
著者:テクツル
東京・池袋で街金を営む著者のもとには、さまざまな多重債務者がやってくる。そして返すあてもないまま借金を重ねていく。そんな彼らの、悲しくも爆笑せずにはいられないさまざまなエピソードを面白おかしく、しかし赤裸々に、街金ならではの視点で紹介。
ほかにも、ブローカー、詐欺師、悪徳業者、反社など、日常生活では出会うことのない人々が続々登場。今まであまり語られることのなかった街金コラムも満載。あなたの知らないお金の世界が見えてくる!