【未熟な地面師】「前科あるでしょ?」「ちょっと失礼じゃないか!」その時、不動産屋が顔を真っ赤にして怒鳴った《「街金は見た!」》
【テツクル半生記⑨】あのころ、ぼくは、若かった。
日頃見えてこない生活金融の現場。『ぼく、街金やってます』の著者であり、現役街金経営者のテツクル氏の実話をもとにバラ色の20代から暗黒の20代後半へと変わるお話しをする。
多重債務者の現実。それを「見続け、貸し続け、回収する」街金の現実。
債務者と債権者の壮絶なドラマをお届けします。
■未熟な地面師
付き合いのあったブローカーおじさんの紹介で、渋谷のはずれの空き家を担保にお金を借りたいという人が来ました。
お金を借りるのは会社を経営している30代半ばのDさん。Dさんがいろいろ相談しているという不動産屋とブローカーおじさんの3人でぼくの会社にやってきました。
でも、お金を借りるはずのDさんの様子がおかしいんです。
ぼくが質問すると、ぜんぶ不動産屋が答えるんです。
「お金を借りる目的は何ですか?」
「……あ、えーと……」
「事業資金です! Dさんの会社で新しい事業をはじめる計画で!」
「事業計画書とかあるんですか?」
「……あ、えーと、それは……」
「はい用意してあります! お借りしたお金をこういうことに使って、売上がこれくらいで返済はこんな感じで!」
「担保の物件なんですが、どれくらい空き家のままなんですか?」
「……えーとですね……」
「もう3年くらい空き家だと思います! 新事業が落ち着いたら建物解体して建て替える予定です!」
Dさん、ちっとも答えられません。
でも、書類に不備はないし、物件の査定も問題なし。Dさんの様子は気になりながらも、貸すことにしました。街金ですからブレーキはゆるめです。
契約書に署名してもらうときも、不動産屋は大活躍でした。
「ほら、ここに署名ね。そしたらここにハンコ押して。はい次はここ……」
不動産屋も、Dさんがお金を借りられれば手数料がもらえるはず。手際よく次々Dさんの署名させていきます。
ぼくは、Dさんが署名する様子に違和感を感じました。
あれ? 契約書に触ろうとしない……。いや、触らないようにしてる……。
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『ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実』
著者:テクツル
東京・池袋で街金を営む著者のもとには、さまざまな多重債務者がやってくる。そして返すあてもないまま借金を重ねていく。そんな彼らの、悲しくも爆笑せずにはいられないさまざまなエピソードを面白おかしく、しかし赤裸々に、街金ならではの視点で紹介。
ほかにも、ブローカー、詐欺師、悪徳業者、反社など、日常生活では出会うことのない人々が続々登場。今まであまり語られることのなかった街金コラムも満載。あなたの知らないお金の世界が見えてくる!