【激増!多重債務】若手青年実業家という詐欺師との貸金バトル——完全無欠の詐欺会社《「街金は見た!」⑪》
【テツクル半生記⑪】あのころ、ぼくは、若かった。
多重債務者の現実。それを「見続け、貸し続け、回収する」街金の現実。
日頃見えてこない生活金融の現場。『ぼく、街金やってます』の著者であり、現役街金経営者のテツクル氏の実話をもとにバラ色の20代から暗黒の20代後半へと変わるお話しをする。
債務者と債権者の壮絶なドラマをお届けします。
■完全無欠の詐欺会社
詐欺師が主人公の映画って人気が出ます。でも世間には、詐欺師に会ったことがない人のほうが多いと思います。
街金にはよく詐欺師が来ます。ぼくからお金をだまし取ろうと思っているパターンもあるし、借りたお金を使って詐欺をしようというパターンもあります。
「このお金を使ってこんな風に人をだまして大金ゲットするので、お金を貸してください」と言われたら、当然貸しません。
街金の免許がなくなっちゃうから。
でもお金を貸した後になって
「コイツ詐欺師じゃねーか!」とわかることはあります。
そんなときはどうするか。
やるべきことはひとつです。
ほかの債務者と同じように粛々と回収するだけです。ぼくたちは警察じゃないので、詐欺師を捕まえるのは仕事じゃありません。成敗するのは仕事じゃありません。ぼくが貸したお金を全力で回収するのが仕事です。詐欺師だろうとなんだろうと、担保をかたに、淡々と回収を進めます。
でももし、持ち込まれた話の全部が嘘だったら。それでももちろん回収しますが、ちょっと荒っぽいことをしなければならない場合も出てきます(あくまでも法律の範囲内です)。
Fさんは若手の青年実業家。
都内某所で広告会社を経営していました。社員は20〜30代の若い人たちばかりだけど、日本を代表するような大企業数社と取引があって、納品した商品のサンプルが社内にずらっと並んでいます。特殊な素材を使ったおしゃれなデザインのものばかり。まさに、絵に描いたような都会の会社です。
今まで街金をやってきて、成金のぴかぴかおじさんは何人も見てきましたが、Fさんは、そういう生き物とは違います。
大手都市銀行とも取引できているのに、なんで街金に?
「A銀行から1億円借りていて、B銀行からは3000万円借りてるんで、枠がいっぱいなんです。そこで5000万円ほどお願いできないかと思って」
確かに急激に伸びた業績と規模から考えると、1億3000万円程度の借入では、これから会社を回していくのは苦しい、でも資金調達は簡単にはいかず、成長する会社はどこでもこの苦労を経験しているはずです。
Fさんは渋谷区にあるおしゃれなマンション住まいだけど、賃貸なので担保にならない。そこで売掛金を担保にしようと請求書や納品書を見せてもらうと、どれもこれも大手企業だらけ。さらに通帳を見ても、入金の相手先には、これでもかとばかり有名企業が並んでいます。
もしかしたら、Fさんは日本の中心にいる人なのかもしれない。
こんなにちゃんとした債務者はめったにいません。
これなら大丈夫。日本がある限り取引先はなくならないし、貸したお金は回収できる。売掛金を担保に公正証書も作成して融資実行。
念のため、Fさんの保有する会社の株の大半も名義変更しました。Fさんが完済したら返すと約束し、渋々ですが応じさせました。
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『ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実』
著者:テクツル
東京・池袋で街金を営む著者のもとには、さまざまな多重債務者がやってくる。そして返すあてもないまま借金を重ねていく。そんな彼らの、悲しくも爆笑せずにはいられないさまざまなエピソードを面白おかしく、しかし赤裸々に、街金ならではの視点で紹介。
ほかにも、ブローカー、詐欺師、悪徳業者、反社など、日常生活では出会うことのない人々が続々登場。今まであまり語られることのなかった街金コラムも満載。あなたの知らないお金の世界が見えてくる!
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