【激増!多重債務】「おいコラ、おまえ、これ使ってオレをだましたの? 有印私文書偽造だよ?」 完全無欠の詐欺会社《「街金は見た!」⑫》
【テツクル半生記⑬】あのころ、ぼくは、若かった。
■有印私文書偽造
数日後、Fさんが地方出張に行くという情報をつかんでいました。ぼくは見た目が悪い従業員を数人連れ、Fさんが留守の会社に乗り込みました。
「あ、テツクルさんこんにちは。今日、社長は出張で」
「知ってるよ」
いつもはひとりで来ていたぼくが、ガラの悪いのを数名引き連れ、社長の留守に来た。社員の人たちがざわつきます。
たいした仕事もないのに、社員たちはいつも忙しそうにしていました。ということは、Fさんの詐欺行為に加担していた可能性が高い。そのときです。
いつもFさんの運転手や雑用係をしていた男の子が、紙袋をかかえて出口の方へダッシュで逃げようとしました。
「トォーウッ!」
ガラの悪い従業員のひとりが男の子にタックルを決め、捕まえました。男の子の持っていた紙袋から、偽造のハンコが大量に出てきました。どれも大企業のものばかり。
「おいこら、おまえ、これ使ってオレをだましたの? 有印私文書偽造だよ?」
泣きじゃくって何も答えない男の子。
面倒なので、パソコンのパスワードだけ聞き出して解放します。
残りの社員も全員帰し、そのまま籠城です。
Fさんやほかの債権者が入ってこられないようにドアの鍵穴を瞬間接着剤で埋めて、社内の換金できそうなものを探します。
担保にしていた売掛金がぜんぶニセモノだったわけですから、片っ端から没収です。
「おいおまえ、何やってんだ! 警察呼ぶぞ!」
解放した男の子が知らせたらしく、Fさんから電話です。
「オレ、大株主だし。そんなことよりおまえ、ハンコぜんぶ押さえたよ。おまえこそ偽造書類の印刷屋じゃねーか」
Fさん、沈黙。
「さっさと帰ってこいよ。話しようよ」
電話を切り、回収作業を続けました。
派手でブランド好きなFさんらしく、社内で結構根の張りそうなものをいくつも見つけることができました。
Fさんの机の中から、高級腕時計が3本出ていました。1本は本物でしたが、2本はコピー。回収できるんだろうか……。
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