日常的にサムライ言葉を話す名古屋人
日本の異界 名古屋⑧
◆侍言葉の原形は愛知の言葉
さてそこで、どうして名古屋には「御無礼する」なんていう漢語っぽい言いまわしが残っているのかだが、これは侍の言葉から広がったものじゃないのか、というのが私の立てた仮説である。侍の言葉なら江戸(東京)から広がるだろう、と思う人がいるかもしれないが、徳川家や豊臣家はもともと愛知県から出ている、というのを忘れてはならない。だから侍言葉の原形は愛知の言葉なのだ。
それが、名古屋では町人にも広がっているのではないだろうか。たとえば名古屋には、「勘考する」という言い方がある。よく考える、という意味だが、「みんなで勘考してやってこまい」なんて言うのだ。この漢語っぽさに、私は侍を感じるのだ。
やんちゃな悪ガキのことを名古屋では「おうちゃくい子」と言うが、あれ「横着い」で、これも変に漢語っぽい。
さしさわりなく無事にやっていることを、「あんばようやっとる」と言うのだが、あれは「塩梅よく」がもとの形である。
そんなふうな、侍の言いまわしが広がったものの一つが、「ごぶれいする」ではないのか、というのが私の仮説だ。
その他、消えゆく名古屋弁、じゃんけんを「いんちゃん」というなど、変わった名古屋弁のエピソードが清水義範著『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)で紹介されている。
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