引きこもりが「出家」を望む今。恐山菩提寺院代がとらえた時代の変化
坐禅で「悟り」は開けない その三
南直哉禅師が会ってきた「出家したい」という気持ちを持つ人はどのような人なのか。約20年の修行を積み恐山・院代となった同師が上梓する『「悟り」は開けない』で語られるアウトサイダー仏教論。「悟り」とは何か――、そして「仏教」とは何か、その本質がわかる。
「出家したい」という気持ち
最近、私は初めて性同一障害の人と会いました。20代の彼は元女性で、「思春期なるにつれ、どうしても女性の身体が嫌で、性転換を決意した」と言うのです。
今はアルバイトをしながら、最終的な手術の資金を蓄えているそうですが、複雑だなぁと思ったのは、性転換して「男性」になっても、性的な指向は「男性」だと言うのです。つまり、性転換者のゲイというわけです。思うに、マイノリティ中のマイノリティではないでしょうか。今は、男性のパートナーと一緒に住んでいて、それなりに落ち着いて生活していると言います。で、この彼が私に「出家したい」と打ち明けるのです。
あるいは、中学校で「引きこもり」になって以来、まともに世間に出ていないという40歳くらいの男性。この人は、ネットにショップを開設して、色々な中古品を売買していたら、それなりに儲かって、生活できるようになってしまったんだそうです。すると、もう「準引きこもり生活」を止める必要もなくなります。
私は、それはそれで結構ではないかと思ったのですが、どういうわけか彼も「出家したい」と言い出すのです。
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