常勝軍団・聖光学院は「初戦」にどんな価値をおくのか
ライター田口元義が聖光学院11連覇への道を追う
各地で夏の甲子園に向けた戦いが始まっている。注目は福島県大会。11年連続甲子園出場という偉業を目指す高校がある。聖光学院ーーその挑戦を3回にわたっておくる。第1回は「初戦」の意義について。
■甲子園への通過点ではない
聖光学院の夏の初戦が決まった。
7月9日。相手は本宮である。「優勝候補の大本命」と目される第1シードであれば、難なく勝利できるはすだ。だた、聖光学院にとって夏の初戦は、単なる通過点ではない。
甲子園への手応えを図るうえで、その意味合いはとても大きい。
初戦を終えた直後の囲み取材。斎藤智也監督は、いつだって疲れた表情を見せる。
「いやぁ、夏が始まったね」
そんな具合で切り出してから、初戦の重要性をしみじみと語るのである。
「夏の初戦はいつも緊張感があるよね。それを選手たちに持たせたいんだよ。『ここから、さらに厳しい戦いが始まる』とは、いつも言っているし、1戦、1戦成長していかないと、とてもじゃないけど甲子園には行けない」
昨年までの4年間、初戦はすべて10点ゲームで勝利している。大差で勝つ。もしかすると、そこで選手たちに慢心が生まれるかもしれないが、斎藤監督は「ここが好機」とばかりに喝を入れる。
例えば昨年、10-0の6回コールドで勝利した大沼との試合後のこと。斎藤監督は厳しい面持ちでこう言っていた。
「今日のような試合は二度とない。ここから、選手たちはもっと生みの苦しみを感じることになるからね。だから、試合が終わった後に『夏を甘く見るなよ!』と言った」
斎藤監督の読みは当たった。
4回戦の喜多方との試合では6-5と僅差だったし、光南との決勝も終盤まで劣勢だった。結果的にコールドは初戦のみ。周囲は「10連覇」という金看板に目を奪われる。しかし、それを手にするまで、聖光学院は艱難辛苦を味わい、勝ってきているわけだ。
ある年、斎藤監督に尋ねたことがある。
――福島で意識しているチームはあるか?
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