西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】
ぶらり大人の廃線旅 第19回
ホームか、線路か、
いつの間にか大田原市に入り、再建されたと思われる「駅の跡」が見えてきた。プラットホームへ上がる斜面にイミテーションの「線路状のオブジェ」が貼り付けられているが、ホームの上へ登る線路などあったはずもなく、おそらくイメージだけで作ったものだろう。史跡として整備するなら、線路やホームの位置づけは節度をもって処遇してもらいたい。ホームが模造か本物かの区別も明記すべきだろう。軽い気持ちで作ったオブジェも、半世紀も経てば本物と区別できない人も出てくる。
ここが大高前(だいこうまえ)駅のはずだが、肝心の駅名標は見当たらない。大高は栃木県立大田原高校の略称で、今年の3月27日に起きた雪崩で、訓練中だった山岳部員の生徒7人と引率の教員1人が犠牲になったのはまだ記憶に新しい。痛ましい事故であった。同校は明治35年(1902)創立の伝統ある旧制中学校が前身で、副首相をつとめたミッチーこと渡辺美智雄氏、息子の喜美氏(元みんなの党党首)も共にここの卒業生である。