【車いすのダイバー】見る力は視力だけで決まらない。見ようとする意欲と見せる方法によって見る可能性が限りなく広がる
寝たきりゼロの老後をすごす方法/その弐
■ロービジョンケアの大切さを訴えたくて
以前、友人とシミラン・クルーズの写真を、大型テレビに写して見ていたときでした。ふと友人が、
「吉野さんが見ることや映像にとても貪欲なので、視覚障害者といることを忘れてしまう」と言ったのです。
「私、見ることに貪欲?」と聞き返すと、「うん。すごく貪欲だ」と答えました。
私が見ることに貪欲になれたのは、私の周りにいた人たちが、私に「見ること」の楽しさと素晴らしさを教えてくれて、適切なメガネやロービジョンのある人向けの機器の提供と、アドバイスをしてくれたお陰なのです。
下の写真は、シミランクルーズの時にデッキに上がって、一眼レフのデジタルカメラで、夕日の沈む所を撮っていたもので、私がもっとも気に入っている写真の1枚です。
この日は、残念ながら水平線の所に雲が垂れ込めていて、太陽は直接水平線から昇ってこなかったのですが、カメラを構えてじっと待っていると、雲間から顔を出した太陽が、何ともいえず綺麗でした。
私が生まれた時、先天性白内障のために水晶体は完全に混濁していて、光を通さない状態でした。
生後6ヶ月の時から水晶体を摘出する手術を受け、6歳の時に凸レンズのメガネをかけて、細かいものが少し見えるようになりましたが、盲学校高等部在学中の16歳の時、適切な度数のメガネを処方していただきました。
35歳ぐらいの頃は、右の眼が雨の日の窓ガラスのように曇り始めて、「失明」の恐怖におののきましたが、適切な病状の説明をしていただき、助かりました。
今も私の周りには「ロービジョンケア」に通じた眼科医さんや視覚リハ門家の方たちがいて、私はこんなにも「見える世界」を楽しんでいます。
60歳になった今でも、私の「見る能力」は少しずつ進歩しているようです。
私はラッキーにも、いつも適切な「ロービジョンケア」を受けて来ました。でも、まだ多くの視覚障害者が適切なケアを受けられずにいて、「見える世界」を楽しむことができずにいます。
「少しでも見える」と言うのは、素晴らしいことです。
視覚障害を持つ人たちが、自分のもっている「見る能力」を最大限に発揮できるように、私は「ロービジョンケア」の大切さと効果を、訴え続けて行きたいと思っています。
「ロービジョンケア」を受けて見たいと思っている方たち、「ロービジョンケア」について、もっと詳しく知りたい方は、視覚障害リハビリテーション協会ホームページの「視覚障害者と家族の皆さんへ(https://www.jarvi.org/for-life/)を見てください。
(その参へ続く)
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著書・執筆紹介
●日本心理学会 「心理学ワールド60号」 2013年 特集「幸福感-次のステージ」
「見ようとする意欲と見る能力を格段に高めるタブレット PC の可能性」
●医学書院 「公衆衛生81巻5号-眼の健康とQOL」 2017年5月発行 視覚障害リハビリテーションの普及
● 現代書棒 「季刊福祉労働」 139号から142号
2013年 「インターチェンジ」にロービジョンケアについてのコラム執筆 142号
● 一橋出版 介護福祉ハンドブック17「視覚障害者の自立と援助」
1995年発行