【絶望から希望へ:神戸刑務所編】その時、懲役は飛んだ!突然の顔面飛び蹴り‼️「西」の男たちの熱い突破者精神《さかはらじん懲役合計21年2カ月》
凶悪で愉快な塀の中の住人たちVol.36
人は絶望からどう立ち直ることができるのか。
人は悪の道からどのように社会と折り合いをつけることができるのか。
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。実刑2年2カ月!
じんさん、今度は神戸刑務所に3年間お世話になります。西の塀の中はお笑い劇場なみの面白さ。どん底でもどこか明るいそんな生活に気持ちが明るくなってきました。希望は、そんな「小さな面白さ」から育っていくような感じかもしれません。今回は、ガチンコのバチコンなお話。
■その時、懲役は飛んだ!「西」の男たちの熱い突破者精神
ある運動時間のとき、こんなことがあった。
運動を行うときには運動員の号令の下、必ず準備体操を行うことになっていた。それが終わると自由運動となり、その場で解散になる。懲役たちは数本しかない爪切りを巡って我先にと爪切りの入っ た箱を抱えて立っている担当の前にすっ飛んで行く。そして早い者順に一列に並ぶ。その数はざっと 30人から40人にもなり、いつも長蛇の列になっていた。
運動時間は30分。その間に爪切りの順番が回ってくればいいが、回ってこなければ〝御茶を挽く〟破目になってしまい、運動も爪切りもできなくなってしまう。
だから、この30分は貴重な時間だった。誰しもが我先にと競って担当の前に並び、少しでも早く 爪切りを借りられるようにするのである。
そんな順番を待って並んでいる懲役たちの列に、映画にもなった親分の元若い衆だと名乗る、身体がデカく、いかにもふてぶてしい面をした奴があとから来て、平気な顔で割り込んだのだ。
すぐ後ろの割り込まれた懲役が、割り込んだ懲役に何か言い始めた。すると、かなり後ろの方で順番を待っていた、痩せてヒョロリとした30代くらいの不良っぽく見えない懲役の一人が黙って列から外れると、割り込んだ奴の横の方へ大きく回り、そして割り込んだ奴に向かって突然走り出し、プロレスでやるような飛び蹴りを勢いよく顔面に入れたのである。
割り込んだ懲役は突然襲ってきた飛び蹴りに、見事に顔面を蹴られて吹き飛んでしまった。やった懲役はすぐ担当に取り押さえられてしまい、非常ベルで駆けつけてきた警備隊に連行されて行ってしまった。文字通り〝飛んだ〟懲役は、割り込まれて文句を言っていた懲役の舎弟分だったのだ。
自分の兄ィの前に割り込みをかけてきた不逞の輩(やから)に、躊躇なく反応して飛んだその素早い行動力と姿勢に、ボクは「西」の男たちの熱い突破者精神を垣間見た思いになった。
運動時間では、時にはこのようにして、いろいろな人間ドラマが上演されるのである。
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。
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