三浦春馬から倉木麻衣、安達祐実、りえ、にこるん、百恵まで。ステージペアレントをめぐる芸能人の悲劇と喜劇 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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三浦春馬から倉木麻衣、安達祐実、りえ、にこるん、百恵まで。ステージペアレントをめぐる芸能人の悲劇と喜劇

結局は大金を稼ぐ自分の子どもに親が嫉妬している?

■芸能界では母親が口を出し、スポーツ界では父親がでしゃばる

 ところで、子供(特に娘)の芸能活動をマネージメントしたがるのは母親に多く、美空ひばりや宮沢りえのケースが有名だ。いわゆるステージママである。
 ひばりの母は晩年、病床での取材で「生きてきていちばんつらかったこと」を聞かれ「お嬢の結婚」だと答えた。そして「いちばんうれしかったこと」については「お嬢が離婚する、といったときでしたね」。もはや、すがすがしいほどの依存ぶりだ。

 りえの母も娘の破局に関与したとされるが、こちらで特筆すべきは娘のヌードを仕掛けたことだろう。さらに、その斜め上を行ったのが安達祐実の母。この人は自分がヌードになってしまった。また、幼稚園児だった祐実の初恋相手であるADと再婚するなど、どこまでも女を棄てない生き方はある意味、永遠の少女と呼ばれる娘にも引き継がれているのかもしれない。

 かと思えば、アスリート関係で子供に便乗したがるのは父親が目立つ。ゴルフでは石川遼や横峯さくらの父、ボクシングでは亀田三兄弟の父がその典型だ。この連中に比べたら、息子がメジャーリーガーとなったことで図に乗り、香西かおりとデュエットCDを出した松井秀基の父などは可愛いものである。

 そのほか、ちょくちょく騒ぎになるのが、娘の独立や移籍の話に親が絡むパターン。鈴木亜美は所属事務所の社長が脱税事件を起こしたことから、両親が裁判を起こして対立が深まり、一時は芸能活動休止に追い込まれた。肩入れしやすいのは母親のほうで、市井紗耶香に井上真央、のん、最近では藤田ニコルの例がある。

 それでも、このパターンでは親子の思惑はそれなりに一致しているわけで、敵対してしまうよりは幸せかもしれない。遠野なぎこの場合は両親から虐待され、特に母親からは痩せるための吐き方を教わって、摂食障害を発症した。距離を置くことで心身の回復を図ってきたものの、子供時代に負ったトラウマは厄介だ。著書「摂食障害。食べて、吐いて、死にたくて。」には「所詮、私の両親は似た者夫婦」「『親子の縁を切る権利』は子ども側にだって、ちゃんとある」などと綴られている。

 そこまで悲惨ではなくても、親に足を引っ張られるケースはよくあり、ローラのメディア露出が減った一因もそれだ。バングラデシュ人の父が詐欺で国際指名手配され、逮捕に至った。損害賠償金などはローラが支払ったが、さすがの彼女もあの笑顔で「オッケー!」とは言えなかっただろう。

 さて、最後は歴史的スター・山口百恵のエピソードだ。彼女は愛人の子として生まれ、シングルマザーに育てられたが、芸能界で売れ出すと父が豹変。娘の所属事務所に借金したり、秘密裡に移籍を画策したり、勝手に記者会見を開いて事務所や娘の悪口を並べ立てたりした。
 百恵が三浦友和との交際を公表したときにも、メディアに登場して「結婚しないでしょう。あの子は自分の置かれている立場を知っている子です」と発言。彼女は自叙伝「蒼い時」のなかで、中学入学時に言われたことを思い出したと書いている。それは「男と手をつないで歩いたりしていたらぶっ殺してやる」という物騒なものだった。

 また、母が父から「親権を渡せ」と要求されたことも記していて、その際、17歳の彼女はこう言い放ったという。
「お金で解決がつくなら、何百万でも、何千万でも、どこに借金したっていいから払ってしまえばいい。どうせ、あの人はお金が欲しいのでしょうから」

 この言葉には、芸能人と親の問題が集約されている。桁外れなカネの動きが、その愛を歪ませるのだ。あるいは、もともと歪んでいた愛が芸能としての魅力を生み、カネに変わって、愛をさらに歪ませるのかもしれないが――。

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『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)
宝泉 薫

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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