『古事記』と『日本書紀』とで、最初に登場する神が異なるのはなぜか?
天地開闢神話と国生み神話②
世界に神が現れる――最初に登場する神の違い
天地開闢神話で興味深い点としては、最初に登場する神が『古事記』と『日本書紀』とで異なるという点もあげられる。『古事記』では、まずアメノミナカヌシ(天之御中主)神が登場するが、『日本書紀』の本文をみると、クニノトコタチ(国之常立)尊がまず初めに誕生する。
アメノミナカヌシ神の「天」は天神のいる高天原をさしていると考えられる。また、「御中」は、神々の中央ということを意味している。そして、「主」は主人ということであり、アメノミナカヌシ神とは、高天原にあって神々の中で中心的な位置を占める主人という意味になる。
一方、クニノトコタチ尊はというと、「国」は天に対しての国であり、地上ということに他ならない。「常立」は、本来は床立であるといわれ、土台が姿をあらわすという意味になる。つまりクニノトコタチ尊は、地上の大地が姿をあらわし、そこにしっかりと立つ神という意味になり、永久的な支配者ということになる。
したがって、クニノトコタチ尊は、地上の支配者というイメージが強く感じられる。これは、天皇家の歴史書としての性格をより強く持つ『古事記』に対して、『日本書紀』は天皇による地上の支配の正統性を強く主張しているということと無関係ではないであろう。