エマニュエル・トッドを我々はどう読むべきか。鹿島茂氏に聞く
Q1:仏文学者としてトッドを書こうと思い至った理由は?
トッドの家族類型に照らしてみると…
それがトッドを読むと、そもそも家族類型は日本とヨーロッパでは違うし、ヨーロッパの中でもフランスとイギリスとドイツはそれぞれ全然違うし、ロシアも全く違う、とある。イングランド「絶対核家族」型、フランス(パリ盆地)「平等主義核家族」型、ドイツ「直系家族」型、ロシア「外婚制共同体家族」型という大まかに4つに分類することが可能であると分析している。そしてその型ごとに遺産の相続の仕方も規定している。そうすると、今までの疑問が腑に落ちることがたくさんあるわけです。
先にあげたイングランド、フランス文学以外でも、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』やショーロホフの『静かなドン』のようなロシア文学にしても、トッドの分類がドンピシャで当たってるんですよ。
日本文学もそうです。いくら小説は自由に書いていいと言っても、典型的な「直系家族」の日本※を舞台にして長男ではなく次男や三男が継いだとか、兄弟姉妹全員で平等分割したという前提で物語を書いていくことはできないわけです。想像力を働かせる以前に直系家族が一つの規範になっているわけですから。
(※編集部注 日本はドイツと同じ「直系家族型」に分類される。直系家族では普通財産は長男にのみ与えられる)
要するに、トッドの分類は社会と小説、社会科学と小説・文学を結ぶ非常に便利な分析ツールになると考えて、真剣に読み込むようになったわけです。
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