「識字率」と「周辺」。エマニュエル・トッドの理解を深める2つのキーワード |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「識字率」と「周辺」。エマニュエル・トッドの理解を深める2つのキーワード

Q2:鹿島先生がとくにひかれたトッド理論の軸、エッセンスについて教えてください。

“周辺”から歴史の不明な部分を探ることができる

 

 そしてさらに最近、トッドはまた大きく転換したんです。それはトッドが分析した家族類型の分布図を読み込んだ言語学の泰斗であるローラン・サガールが「中央ではなく、周辺、辺境により本質的で起源的なものが残っている。これは言語地理学では当たり前のこと」と批判したことがきっかけです。

 こうしてトッドは、地理学への歩み寄りを強め最新作『家族システムの起源』を書きました。そこでは、「ユーラシア大陸の周縁部に残っている家族形態の方がより古い。つまり直系家族や核家族(絶対核家族、平等主義核家族)は共同体家族より古い形態である」と延べ、持論へと当てはめています。 

写真を拡大 4つの家族類型 世界地図
次のページ「辺境に古いものが残って、中心は変化しやすい」

KEYWORDS:

オススメ記事

鹿島 茂

かしま しげる

鹿島 茂(かしま•しげる)



1949年生。仏文学者。明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。『職業別パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど数多くの受賞歴がある。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMAimagesSTUDIO」を開設。新刊に『神田神保町書肆街考』(筑摩書房)、『太陽王ルイ14世ヴェルサイユの発明者』(KADOKAWA)がある。Twitter アカウント:@_kashimashigeru


この著者の記事一覧