「識字率」と「周辺」。エマニュエル・トッドの理解を深める2つのキーワード
Q2:鹿島先生がとくにひかれたトッド理論の軸、エッセンスについて教えてください。
“周辺”から歴史の不明な部分を探ることができる
そしてさらに最近、トッドはまた大きく転換したんです。それはトッドが分析した家族類型の分布図を読み込んだ言語学の泰斗であるローラン・サガールが「中央ではなく、周辺、辺境により本質的で起源的なものが残っている。これは言語地理学では当たり前のこと」と批判したことがきっかけです。
こうしてトッドは、地理学への歩み寄りを強め最新作『家族システムの起源』を書きました。そこでは、「ユーラシア大陸の周縁部に残っている家族形態の方がより古い。つまり直系家族や核家族(絶対核家族、平等主義核家族)は共同体家族より古い形態である」と延べ、持論へと当てはめています。