日本の成長支えた「直系家族」システム。その「殻」は捨てるべからず
Q5:伝統的な直系家族的理念と、教育熱心さが日本の成長を支えたのでしょうか。そして時代の流れもある中で今後日本社会はどのようにあるべきでしょうか?
英国のEU離脱など、世界情勢の大きなうねりを読み解いてきた、エマニュエル・トッド理論。じつは日本のあり方を考える際にも有効なツールだ。わが日本は、トッドの家族類型では「直系家族」にあたる。あらためて日本社会の根っこにある「直系家族」の強み、弱みとは? 新刊『エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層』を上梓した鹿島茂氏が説く。
かつては教育熱心が日本を支えていたが。。
(直系家族特有の)教育熱心が今までの日本を支えていたのは事実です。
ところが最近はあまりにも社会的格差が広がってしまって、底辺の層から善い教育を受けようともがいてもアクセスできない場合があります。戦前なら例えば、士官学校や師範学校など、貧困家庭からでも優秀な子ならバイパスで上に引っ張り上げることができました。
そのせいで陸軍が強力になりすぎたという負の側面はあれど、一種の救済制度であったわけです。
だけど今はそういう仕組みはなくて、逆に象徴的なのは「親の年収と子供の偏差値が完全に連動している」という事実。東大生の親が、年収もダントツ。かつての“お坊ちゃん・お嬢さん大学”に子どもを通わせている親が年収が高いかというと、そんなことは決してない。親の収入と子の学力が見事に連動して、完全に階層社会になってしまいました。
そうすると下の方はもう、直系家族なんてやってられない。子供に一刻も早く働くようになってもらわないといけない。核家族じゃないとやってられない。貧富の差を是認している社会が、いくら直系家族に戻せと叫んでも無理に決まっているのです。
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