ベテランの存在感とはどういうものか。カープ・石井琢朗「タク論。」
広島カープ・石井琢朗コーチの野球論、第三回
■.新井貴浩「値千金弾」と「数字以上の価値」
7月7日、神宮球場の対ヤクルト戦。新井貴浩の代打逆転3ランホームラン――。皆さんの記憶にも新しいことでしょう。
その試合、3対8で迎えた9回表にカープは、5点のビハインドをひっくり返し、見事に勝利を手にしました。この回は、バティスタのホームランから始まり、一死から菊池(涼介)もホームラン。丸(佳浩)が四球で繋ぐと、今度は二死から松山(竜平)、西川(龍馬)が執念で繋いでお膳立てをすると、仕上げ冒頭、代打新井の逆転3ランホームラン。
そんなベテランの活躍はこれだけでは終わりません。3戦目の7月9日にも、2対3で迎えた9回に代打で登場すると、2日前と同じ小川(泰弘)投手から、今度は同点タイムリーを放っています。
40歳を超えて衰えを知らないベテランが、勝利をもたらす価値ある一打を放つ。表舞台で存在感を発揮する。すごいことです。
でもそれ以上に、舞台裏でも、今のチームに欠かせない精神的支柱が新井貴浩なんです。
今回は、そんなベテランをテーマに僕の考えを伝えていければと思います。
よく「〇〇とハサミは使いよう」と言いますが、それはベテランにも当てはまり、使いようでは、ベンチワークがしやすくもしづらくもなります。使い方を間違えれば、それこそハサミのような凶器と化してしまいますが……、それくらいチームに影響力を与えるのがベテランの存在感と言えます。
チームにとってベテランとはどういう存在なのか。ベンチに入っている以上は、数字を残す、結果を出すことももちろん大事なことですが、それ以上に求められるモノ(価値)があると僕は思っています。それこそ、今のカープで言ったら新井貴浩の存在です。