「勝ちパターン」から抜け出せなくなった百貨店業界
【百貨店不況】を「日経ビジネス」記者・杉原淳一氏が徹底解説2/3
「今さら聞けない」ニュースのキーワードについて、「分からないことはなんでも聞いちゃう」いまドキの社会人、トオルくんとシズカちゃんが第一人者の先生たちに話を聞いていきます。
【第1回:業界売上6兆円割れに。百貨店不況の一番の原因は何なのか?】
●かつては「イノベーター」だった百貨店
シズカ…前回は百貨店業界の厳しい現状を教えてもらいました。でも私としては百貨店自体にも問題点があったのかなと思ってるの。何か打つ手はなかったのでしょうか。
杉原(杉原淳一、「日経ビジネス」記者、『誰がアパレルを殺すのか』著者)…いいツッコミです。それを考えるために少し百貨店の歴史を振り返ってみましょう。実は、大手百貨店のルーツは「呉服屋」にあったんですよ。
トオル…え、そうなの!? 知らなかった!
杉原…呉服屋の販売方法は、まず訪ねてきたお客さんの要望を聞き、店の奥からそれに合った商品を持ってきて売っていました。これを「座売り」と呼びます。明治時代までこの販売方法がスタンダードでしたが、三越(当時は三井呉服店)が初めから店頭に商品を並べておく「陳列販売」に変えたのです。
シズカ…今では当たり前の光景だけど、百貨店がきっかけだったなんて!
杉原…つまり、呉服屋がイノベーションを起こし、今日の百貨店になっていったわけです。そんなイノベーターの百貨店でしたが、高度経済成長期になるとチャレンジスピリットをなくしていきました。
トオル…かつては「イノベーター」! ということは今の「問題点」というのはその性格を失ってしまったことにある……。
杉原…そういうことです。一回乗った勝ちパターンから抜け出せなくなったのでしょう。そして、百貨店の内部からイノベーションが生まれていなくて硬直化してしまったのです。
シズカ…その「勝ちパターン」って?