「GINZA SIX」ほど百貨店らしい百貨店はない
【百貨店不況】を「日経ビジネス」記者・杉原淳一氏が徹底解説3/3
【第1回:業界売上6兆円割れに。百貨店不況の一番の原因は何なのか?】
【第2回:「勝ちパターン」から抜け出せなくなった百貨店業界】
●「GINZA SIX」のインパクト
杉原(杉原淳一、「日経ビジネス」記者、『誰がアパレルを殺すのか』著者)…(百貨店不況を打開するために)間違いなく言えるのは、変化していくことが重要。むしろ、変化しなければ、売上の右肩下がりは止まらないのではないでしょうか。
トオル…でも「変化する」と言っても、いろんな変化があるよね。
杉原…例えば最近オープンした「GINZA SIX」はいい例でしょう。
シズカ…私にも気になってるの! オープンのとき,かなり長い行列ができていたわよね。テレビで見ました。
杉原…GINZA SIXは、大丸や松坂屋を展開する「J.フロント リテイリング」などが運営しています。ポイントは“いわゆる百貨店”の方式はとっていないこと。
トオル…ん、ん? どういうこと?
杉原…建物を作ってブランドに入ってもらうまでは既存の百貨店もGINZA SIXも同じです。しかし、GINZA SIXの場合は、商品を仕入れるのではなく、ブランドから賃料を払ってもらっている。つまり、いわゆる百貨店ではなく、ショピングセンターに似た業態です。収入のベースは賃料。百貨店というよりも、不動産業というイメージですね。加えて、GINZA SIXには、能楽堂があったり、銀座では珍しいオフィススペースもあります。
シズカ…なんか、今までの百貨店という感じじゃないわね。……ちょっと待って! これって呉服屋から百貨店に変わったときのようなイノベーションがまた起きつつあるってことね!
トオル…待ってました、イノベーター!
杉原…同じ印象を受けますよね。黎明期の百貨店がお客さんから支持されたのは、あらかじめ商品が並んでいたほうが便利だからです。GINZA SIXは百貨店業界から見れば「百貨店ではない」かもしれません。実際に業界ではそういう声もありますが、一方で、お客さんから見た場合「百貨店なのか、ショッピングセンターなのか」はどちらでもいい。
トオル…そうだよね。「百貨店に行きたい!」と思っている人は少なそうだし。