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元エース潜水艦長が指摘。自衛官には有事における覚悟が無いのか

日本の軍事力 自衛隊を阻むものの正体④

自衛官のサラリーマン化

 有事には、国のために命を賭けることのできる覚悟があるかどうかです。状況によっては、 かわいい部下を死地に投じることになります。平時から、そのために訓練し、自己修養し、部下を鍛えているかどうか。いくら人間的には、腰が低くて規律正しくても、有事に役に立つことができないなら自衛官として失格でしょう。

 たとえば民間企業で、普段は優しく、部下から好かれるような社長でも、何か不祥事があったときに責任逃れをするようでは、社長としての資格はありません。スポーツでもそうです。練習では真面目に選手と向き合い、指導する監督でも、本番の試合でプレッシャーにつぶれるようでは、監督としての価値はありません。鍛えたはずの選手もまた同様で、練習では見事な技術を披露しても、本番で実力を発揮できない「優秀な」選手たちでは、豪華な練習場、立派な道具も無駄になります。

 自衛官も同じです。規律正しく好感の持てる人物であっても、有事における覚悟や心構えがなければ 、自衛官の資格はありません。

 法律や国民の意識がどうあろうと、国防のために税金をつぎ込んでいる存在であることに違いはないのです 。

 したがって、自衛官は人間としてのモラルはもちろんのこと、自衛官としてのモラルを持ち合わせていなければなりません 。これがなければ税金は無駄になります。

  しかし実態はどうでしょうか。私の知る限り、 余暇に戦術書を読んだり、戦史の勉強をしたりする自衛官は九牛の一毛です。それを自衛官のサラリーマン化といいます。こう言うとサラリーマン諸兄に失礼ですが、要するに保身と立身が最優先で、任務は二の次ということです。サラリーマン化というより 、 官僚化と言うべきかもしれません。

〈『日本の軍事力 自衛隊の本当の実力』より構成。〉

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中村 秀樹

なかむら ひでき

昭和25年生まれ、福岡県出身、防衛大学校18期。潜水艦艦長のほか、海上幕僚監部技術部、護衛艦隊運用幕僚、情報本部分析部、幹部学校教官、防衛研究所戦史部等勤務。平成17年退官。著書に『本当の潜水艦の戦い方』『本当の特殊潜航艇の戦い』『これが潜水艦だ』『尖閣諸島沖海戦』『第二次日露戦争』『日韓戦争』(潮書房光人社NF文庫)『潜水艦完全ファイル』(笠倉出版社)などがある。


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