今の自衛隊に対して、元エース潜水艦長が感じた「ある」傾向
日本の軍事力 自衛隊を阻むものの正体⑥
元エース潜水艦長が書いた『日本の軍事力 自衛隊の本当の実力』(中村秀樹・著)が話題を呼んでいる。そのなかで指摘される軍隊における歴史と伝統の重要性とは。
自衛隊は賢者か、愚者か?
どんなことにも、理想と現実があります。 理想像を知らなければ、現実こそがすべてだと思ってしまう。プラトンではありませんが、あるべき姿としてのイデアは必要です。なければ努力目標がわかりません。
自衛官には 、あるべき軍人像というイデアがないように見えます。軍人像同様、軍隊像もまた、ありません。あるべき姿を夢想だにできず、仕事を通じて得られただけの限られた経験や知識、それだけですべてを判断してしまっているかのようです。そして、消化不良のまま米国から直輸入された知識が幅を利かせています。
かつての自衛隊は 、旧軍人があるべき姿を腹に秘め、現実に妥協しながら作り上げてきました。いまにちゃんとした軍隊にするために隠忍自重していたのです。しかし戦後世代にとっては、この妥協の産物がすべてです。したがって、本来あるべき姿というものがわかりません。また、わからないことすら認識していないから、問題を感じていないのです。知らないことを知らなければ何も始まらないのは 、なにも哲学の世界だけの話ではありません。
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