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『古事記』に記されたイザナキとイザナミの役割

天地開闢神話と国生み神話④

原始の世界に次々と生れ出る神

イザナミ、イザナギ像

<イザナキ・イザナミの役割>

『古事記』の神世七代の最後に登場するのがイザナキ・イザナミの両神である。『日本書紀』でも、トヨクムノ尊に続けて神世七代に相当する神々が生まれ、その最後にイザナキ・イザナミのペア神が登場する。

 このイザナキ・イザナミ両神に与えられた役割は、『古事記』の言葉をかりるならば、「漂へる国」である地上をしっかりとした形のあるものにせよ、ということである。具体的にいうならば、2神による国生み、そして、それに続く神生みということに他ならない。

 そこで、天の沼矛を天神から賜わったイザナキ・イザナミ両神は、天と地を結びつけている天の浮橋に立って、そこから天の沼矛を使って漂えるような状態の地上をかき回して引き上げたところ、矛の先から塩がぽたぽたとしたたり落ちて島となった。この島がオノゴロ島であり、両神はこの島へ天降り、国生みをおこなうことになる。

 まず、イザナキ・イザナミ両神は、オノゴロ島に、天の御柱とよばれる立派な柱を立て、これを広大な邸宅に見立てて結婚をしようという。そして、イザナキ神はこの柱を左から回り、イザナミ神は右から回り、両神が出会ったとき、イザナミ神が先に「何とすばらしい男性でしょう」といい、あとからイザナキ神が「何とすばらしい女性であろう」という。このとき、イザナキ神は「女神から先に言葉を発するのは良くない」という。ここには、儒教の男尊女卑観が反映されているといわれている。その後、結婚して子供(国)を生み始めるのであるが、女神が先に声を発したことが大きな問題になるのである。

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瀧音 能之

たきおと よしゆき

1953年生まれ。駒澤大学文学部史学科教授。専門は日本古代史。『風土記』を中心として、出雲の地域史の研究を行っている。著書に『古代出雲を知る辞典』『古事記と日本書紀でたどる日本神話の謎』など多数がある。



 


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