【第3波を乗り越える】「ギリギリまで頑張る」リスクから「みんな違うことを認め、休む」安全へ! 余裕のある組織づくりへ《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊶》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【第3波を乗り越える】「ギリギリまで頑張る」リスクから「みんな違うことを認め、休む」安全へ! 余裕のある組織づくりへ《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊶》

命を守る講義㊶「新型コロナウイルスの真実」

◼︎楽になることは悪いこと???

 日本の社会にはまだまだ、「楽になることは悪いことだ」という倫理観が染みついています。医療の世界なんかもどっぷり浸かっていますよ。

 だから今回の新型コロナウイルスは、ギリギリまで頑張る倫理観が蔓延している日本の社会に非常にフィットした、拡がりやすいウイルス感染だと思います。

 と言うのなら、だったらなんでイタリアで流行るんだ、という話になりますよね。イタリアの人たちって、そんなに歯を食いしばってるふうに見えないですから。握手やハグの習慣のせいだというのは、証明はされていませんが、よくいわれてる仮説ですね。「感染症が流行する要素」も単体なものではなく、複合的なのです。

 いずれにせよ、欧米にはやっぱり油断があったのでしょう。「中国で起きてる問題だから、関係ない」と思っていたし、ひどい人になると「あれは中国人の病気だぞ」と人種差別の道具に使っていたりもした。

 でも、どこの地域にも、地域なりの病原体がいるわけです。例えば日本脳炎は日本にいますし、エボラはアフリカのウイルスですし、アメリカ合衆国には今でも狂犬病のウイルスもペストもいます。

 先日、北京でペストが見つかって、日本でも「中国からの入国を禁止しよう」みたいなことを言った人がいましたけど、何のことはない、アメリカ合衆国でも毎年ペストが出ているんです。だから「北京でペストが出た」という理由で中国人の渡航を禁止にするんだったら、アメリカ人も渡航禁止にすべきなんですよ。人種差別のデマを流すために、事実をちゃんと見てないんですね。


「新型コロナウイルスの真実㊷へつづく)

 

 

 

 

 

 

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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