11年連続甲子園に向かって。聖光学院・三塁コーチャーが飛ばした「檄」
ライター田口元義が聖光学院11連覇への道を追う-2
「本来の強さ」が垣間見られる瞬間
順調過ぎるくらい順調に勝ち進んでいる。結果だけを見れば誰だってそう思うはずだ。
聖光学院の夏は、13-0で快勝した初戦の本宮戦を皮切りに3試合連続でコールド勝ち。小高産業技術との準々決勝も5-0と危なげなく勝利した。何より4試合戦い、失点はまだ許していない。11連覇を目指すチームの「王者の貫禄」と言ったところだろう。
「スイスイ来すぎているところがあるよね。まだ、本来の強さがない」
準々決勝後の囲み取材、斎藤智也監督の言葉には、絶対的な手応えが抱けていないようにすら感じた。
毎年、「夏は甘くない」と監督は言い続ける。
例えば、聖光学院が夏に優勝を目指す上で重要視するベスト8をかけた4回戦がそうだ。近年では2014年の小高工で2-0。翌年も郡山に7-1だったが「苦しい試合だった」と述べている。そして、昨年の喜多方も6-5だった。大会を通じて相手を圧倒してきたのではなく、聖光学院はむしろ、接戦をものにして成熟していくチームである。快調にトーナメントを勝ち抜く。そこで、危機感に似たような感情を抱くのも無理はないのだ。
そうは言っても、聖光学院は着実に、斎藤監督が言う「本来の強さ」を手に入れようとしている。
根拠を挙げるのならば、それは、失敗を糧に成長する選手の姿である。
「試合に出たくても出られない3年生がいるなかで、自分はベンチにいられる。そのこと自体が幸せなことなんです。これから、自分は大事な場面で出してもらえるかもしれない。そのときに、控えメンバーやスタンドで応援してくれる選手のために悔いの残らないプレーをする。今はそれだけしか考えていません」
強い語調でそう宣言したのは、背番号「4」の小泉徹平だ。昨夏の甲子園で主力としてベスト8に貢献し、新チーム発足後も主将に任命された不動のレギュラーだが、夏はベンチスタートが目立つ。それでも、小泉は「今できることを一生懸命やるだけ」と、自分に言い聞かせるように繰り返す。
- 1
- 2