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【オンライン授業と少人数クラス…その効果と課題】教育現場における「効率」を考える

第41回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

オンライン授業

■教育における「ICT活用」と「少人数」の目的は何か

 政府・文科省が目指しているのは教育の「効率化」かもしれない。
 8月25日に第47回教育再生実行会議が開かれ、出席した安倍晋三首相は「ICTの本格的活用による個別最適な学びや少人数による指導体制などの環境整備について改めて検討する必要があります」と挨拶している。
 続いて萩生田光一文科相も、初等中等教育段階で「ICTの本格的活用による、子どもたちを誰一人取り残すことのない、個別最適な学びはどうあるべきか」と「ICTの本格活用のための少人数による指導体制や環境整備」を会議での論点として示した。
 2人の話におけるキーワードは「ICT活用」と「少人数」である。どちらも話題になっているテーマであり、政府・文科省としても本気で取り組む意向を示したと言える。

 新型コロナウイルス感染症をきっかけにICTを活用したオンライン授業が注目されている。しかし、その実施率はまだ低い
 6月21日に内閣府が、子育て世代約2000人に小中学生のオンライン教育について聞いた調査結果を公表してる。そこで「オンライン授業を受けている」と答えているのは、全国で45.1%だった。ただし、これには大きな地域格差がある。東京23区だと69.2%と7割近くに達しているのに対して、地方圏では33.9%と3割強でしかないのだ。
 これには、ICT機器の普及が関係していると思われる。文科省は今年度中の「1人1台端末」の実現を目指しており、これが達成されればICT機器普及の地域格差はなくなる可能性は高い。

 

■オンライン教育の現状はどうか

 だからといって、それで一気にオンライン授業が進むかといえば、話は別だ。内閣府調査で「オンライン授業を受けている」と答えた率が地方圏に比べて格段に高い東京23区でも「学校の教員からオンライン授業を受けている」と答えているのはのは26.2%に過ぎない。学校におけるオンライン授業の普及は、まだまだということだ。
 では23区の子どもたちは、誰からのオンライン授業を受けているのか。「学校以外の塾や習い事でオンライン授業を受けている」との答えが33.8%を占めているのだ。オンライン授業に関しては、学校より学習塾のほうが進んでいるということになる。

 学習塾がオンライン授業に熱心に取り組んでいることもあるが、学習塾の学習がオンライン授業に向いているとも言えるだろう。学習塾の学習は、テストで点数をとるためであり、入試に向けてのものである。そうした学習には、オンライン授業が向いているともいえる。
 学校での学習でも、テストでの点数を重視する傾向が強まってきている。学習塾と同じようになってきているのだ。その傾向が強まっていくほど、オンライン授業を導入するメリットも大きくなっていくだろう。
 そのためのICT活用を、安倍首相も萩生田文科相も期待しているのかもしれない。教育再生実行会議での挨拶には、その意味が込められていると思われる。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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