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【オンライン授業と少人数クラス…その効果と課題】教育現場における「効率」を考える

第41回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■「少人数クラス」ではない「少人数」制度の実現とは

 もうひとつ、2人の挨拶にあった「少人数」という言葉が気にかかる。周知の通り、新型コロナをきっかけに「少人数クラス」へ注目が集まっている。
 新型コロナへの感染予防には3密(密閉、密集、密接)が重要だといわれているが、現在の教室の状況は3密そのものである。これを解消するには1クラスあたりの人数を減らす必要がある。
 少人数クラスを求める理由は、3密解消だけではない。現在の1クラス40人(小1は35人)という数は、1人の教員が同時に指導するには多すぎるからだ。
 学習指導要領によって学習しなければならない内容は増えているが、丁寧に指導するために現在の人数は適正とは言えない。1クラスあたりの人数を減らす必要がある。そのための少人数クラスだ。

 しかし安倍首相も萩生田文科相も、「少人数クラス」とは言っていない。使っているのは、「少人数」という言葉である。クラスを少人数にしなくても、授業だけを少人数にすればいいと受け取れる。
 その布石もある。文科相の諮問機関である中教審(中央教育審議会)の「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」は8月20日、答申の中間まとめ骨子案を示している。そのなかで、小学校高学年からの教科担任制を2022年度をめどに「本格的に導入する必要がある」と明記している。
 ただし、全科目での教科担任制を目指しているわけではない。教科担任制の対象とすべき教科として中教審の部会は、すでに教科担任制が導入されている理科に加えて、英語と算数での導入を優先すべきとしているのだ。

 

■「効率化」を求められた上に、それを実行するのは誰なのか

 この3つが優先科目であり、グローバル化と技術革新を優先している政府の方針を意識したものと思われる。そうした分野に優秀な人材を供給するために、小学校段階から教科担任制を導入して、学力を向上させようとしている。
 しかも能力別にクラスを分ければ、効率的な授業を行える。すでに高校では取り入れられている能力別クラスが、小中でも積極的に導入される可能性がある。そこに少人数での授業が取り入れられれば、さらに成果は期待できるかもしれない。

 そのためには、クラスそのものを少人数にする必要はない。クラスはそのままに、必要な科目のときだけに少人数にすればいいのだ。クラスそのものを少人数にすれば、クラス数が増えるので、教員の数もかなり増やさなければならない。しかし必要な科目だけで少人数授業をやり、教科担任を置くことになれば、教員の増員も最低限に抑えられる可能性がある。
 人件費をかけないで大きな成果を得るためには、少人数クラスではなく、特定の科目だけで少人数授業を、教科担任でやるに限るのだ。安倍首相や萩生田文科相が「少人数クラス」と言わずに「少人数」としていることの意味が、実はそこにある気がする。

 そこにICTを組み合わせていけば、さらに効率を追求できる可能性はある。二人が教育再生実行会議の議論に求めているのは、そのための仕組みづくりなのではないだろうか。
 政府・文科省は、教育の「効率化」を急ごうとしている。そうなれば当然、教員も「効率化」を求められることになる

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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