まるで小説のように胸を打たれる……書店員が本気ですすめる「泣ける新書」
書店員がすすめる、思わず感動する新書!④
映画やドラマと同様に、読書においても「感動する」「泣ける」というのは重要な要素のひとつ。もちろん、新書にもそうした本が多数ある。
「本は好きだけど、新書はあまり読まない」という人に向けて、本のプロである書店員の方々にテーマ別の「おすすめの新書」を聞くこのシリーズ。4回目は読むだけで心がジーンとする「感動する、泣ける新書」を紹介しよう。
◆笑って泣ける! 感情を揺さぶられる闘病ドキュメント
『脳が壊れた』鈴木大介・著(新潮新書)
41歳のときに突然、脳梗塞に襲われたルポライター。次々に見舞われる怪現象の裏で、脳に何が起こっているのか? 当事者が持ち前の探究心で自身の身体に起きた障害や変化を取材した、深刻なのに笑える感涙必至の闘病ドキュメント。
☆推薦人:三省堂書店東京駅一番街店 岩本さん
「著者は、病気で倒れるまで自分が死ぬほど働いて家族や生活のこともあまり省みていなかったのですが、脳梗塞になったことで見直していくんです。家事が苦手という奥様を『そんなのできて当たり前』『みんなできるのに』と責めていたことも、その人が生来持っているものがある、と気づくんです。著者自身の認識や身体の障害の記録を読むうちに、他者の障害を知ることは社会を知ることなんだと感じるようになりました。苦手な部分もそのまま受け入れ、得意なことで補っていけばいいと、視点が変わります。よくある“感動の闘病記”とは違って、基本的には病気を客観的に説明されていて、合間にあるエピソードが爆笑できるぐらい面白いんですよ。号泣もしました。まさに感情を揺さぶられた本でしたね」
◆混乱を極めた時代に政治哲学に身を捧げた女性の戦いが心を打つ!
『ハンナ・アーレント 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』矢野久美子・著(中公新書)
『全体主義の起源』『人間の条件』などで知られる政治哲学者のハンナ・アーレント。ユダヤ人としての出自を抱えながら、ナチ台頭後の亡命生活や公共性を求め続けた、その強靭な生涯、ラディカルな思考の軌跡を繊細な筆致で描く。
☆推薦人:紀伊國屋書店西武渋谷店 竹田店長
「ハンナ・アーレントは『人間の条件』や『全体主義の起源』がクローズアップされがちですが、実際、彼女はどんな人物だったのか? これらの作品を書くに至る彼女の生涯が描かれた本です。ハンナ・アーレントについては専門書のような難解で分厚いものもありますが、同書は彼女が一人の人間としてどう生きたかがすごくコンパクトにまとまっていて、非常に読みやすい。著者も女性ということで、ハンナ・アーレントの女性としての素晴らしさもより素直に伝わってくる印象があります。第2次世界大戦の最中、混乱を極める時代において女性が政治哲学に身を預け生きる困難さを抱え、それでも戦い続けた。その生涯には心を打たれ、胸が熱くなります」
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