新聞や週刊誌よりすごいかも!? 書店員イチオシの“スクープ新書”
書店員がすすめる、思わず感動する新書!⑥
スクープは新聞や週刊誌の専売特許ではない。じつは、新書にもこれまで明らかにされていなかった、知られざる事実を“スクープ”した本が数多くあるのだ。
「本は好きだけど、新書はあまり読まない」という人に向けて、本のプロである書店員の方々にテーマ別の「おすすめの新書」を聞くこのシリーズ。6回目は、読む者をびっくりさせる「スクープ新書」。驚きの真実に、あなたは耐えられるだろうか?
◆日本は農業弱者じゃない! 日本の農業の真の姿を暴く一冊
『日本は世界5位の農業大国』浅川芳裕・著(講談社α新書)
日本の食糧危機と農業弱者論は農水省によるでっち上げだ。予算ぶん捕りのための陰謀だったのだ。年生産額8兆円は、先進国のなかでもアメリカに次ぐ第2位。生産高でみると、ネギは1位、キャベツは5位、コメは10位。日本の農業は世界と比べたとき、どれだけズレているのか? 農業の現実を暴く一冊。
☆推薦人:ブックスタマ 加藤さん
「日本の食料自給率は40%で、外国から農作物を輸入しないと、国民はすぐに飢えてしまう……と、かつて学校で習いました。ところが、実際には日本は世界で5番目の農業生産額を誇る国だというから驚きです。そもそも、自給率の計算方法が問題で、国内の農業生産が増えたからといって、自給率は増えません。低い自給率を見せつけることによって、あたかも日本の農業は保護しなければならない存在であるかのように印象付けられてしまっていたのです。日本の農業の正しい姿と、これから向かうべき方法がわかる本です」
◆視覚とはいったい何か? 見えないことで新しい感覚が生まれる
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗・著(光文社新書)
人間は日々、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の「五感」から多くの情報を得て生きている。なかでも視覚は特別な位置を占め、人間が外界から得る情報の8~9割は視覚に由来するという。では、視覚を取り除くと、世界の捉え方はどうなるのか?目の見えない人の「見方」に迫りながら、「見る」ことを問い直す。
☆推薦人:三省堂書店東京駅一番街店 岩本さん
「タイトルだけ見ると、福祉論のようにも思えますが、まったく違います。著者の伊藤さんが、『目が見えない人は世界をどう見ているのか』ということを、インタビューを通じて解析していく内容です。この本を読むと、目が見えている人ほど、フィルターやバイアスがかかり、偏見を持っているということがわかります。たとえば、目の見える人には、平坦に感じる直線の道でも、目が見えない人が歩くと、そこが坂道なのがわかったりとか。どのくらい角度がついているかが、踏みしめることでわかるそうです。目が見えないことにより、新しい感覚が生まれるって、不思議ですよね。私たちが当たり前に感じているこの“感覚”が何なのか、見つめ直すきっかけになる本です」