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在来工法を利用して復元された金沢城

外川淳の「城の搦め手」第25回

 ある雑誌の取材で金沢城を訪れ、ほぼ1日がかりで、加賀前田100万石の牙城を巡り歩いた。
 金沢城をはじめて訪れたのは1981年のことだった。そのころは、本丸周辺は金沢大学のキャンパスとして利用されていた。そのため、石川門で守衛さんに声をかけてから、30間長屋などを探査した記憶が残される。
 明治維新後、金沢城は、陸軍第14師団の駐屯地として利用され、戦後は金沢大学のキャンパスとなった。1996年からは、金沢大学の郊外移転にともない、発掘調査と整備事業が開始されて今日に至る。2001年、NHK大河ドラマ「利家とまつ」が放送された年には菱櫓などの建物が完成した。

復元された菱櫓。

 金沢城の現状については公式サイトを参照されたい。

復元された河北門。 車椅子用の通路(写真左下)は木材が利用されるなど、歴史的建造物として配慮されている。

復元された50間櫓内部。 エレベーターが内部に設置されることにより、外観上は往時の景観が演出される。

  宇都宮城の金属製の手すりと比較すると、木製のほうが見た目によいことは明らかである。また、歴史的建造物としての外観を考慮すると、エレベーターは内部に設置したほうがベターである。それでも、江戸時代には存在しなかった車椅子用の通路をどのように設置すべきかは、議論すべき課題ではあったと思う。
 しかし鉄筋コンクリート製の天守が建設されたころと比較すれば、在来工法が利用される今日の城郭復元は、よりよい方向にあると評価できる。

 さて、金沢城を訪れる人たちの圧倒的多数は、二の丸に位置する菱櫓などを見ると、城を後にしてしまう。やはり、城好きであれば、建物が残されていなくとも城の中心である本丸にも足跡を残すべきなのでは?

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外川 淳

とがわ じゅん

1963年、神奈川県生まれ。早稲田大学日本史学科卒。歴史雑誌の編集者を経て、現在、歴史アナリスト。



戦国時代から幕末維新まで、軍事史を得意分野とする。



著書『秀吉 戦国城盗り物語』『しぶとい戦国武将伝』『完全制覇 戦国合戦史』『早分かり戦国史』など。



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