鬱は“病気”なんです――。自身も経験、『うつヌケ』の作者が伝えたいメッセージ
Q3.多くの人が潜在的に心を病んでしまう可能性がある社会で、周囲の人たちはどう接するべきでしょうか。また、田中さんが鬱に悩まされていた当時、本当はこうしてほしかった、と思うようなことはありましたか。
『うつヌケ』という漫画が異例のヒットとなっている。作者の田中圭一氏は、自身も鬱病を患っていた過去を持ち、同様の経験者たちにインタビューをして漫画化した。田中氏は、同書は鬱を知らない読者にこそ役に立つ、と語る。例えば「鬱は“病気”」という単純な事実も、当事者ではないとなかなか理解できないものだ。
「もう鬱しかない」
――そもそも田中さんは、どんなかたちで鬱を自覚するようになったのですか。
2001年から働き始めた会社の仕事がだんだんうまくいかなくなって、2006年あたりから、「どうもこれはおかしい」と思うようになっていました。とにかく明確な理由はないけれど、会社をどうやめるか? ということばかり考えるように。結局、性に合わない仕事を無理にやっていたのが引き金になっていたのですが、当時はそんな意識すらなかったのですよ。どちらかといえば恵まれた職場環境だったし、周りはいい人ばかりで、給与も悪くない。不満があるわけではないし、男性更年期でもなければ健康を害しているわけでもない。
だけども、どんどん気持ちが重たくなってくる…。色々な可能性を取り除いていくと、もう鬱しかないという結論を突き付けられたのですね。まさか自分が鬱とは…と思ったけれども、それしか選択肢がなかったのです。それで診療科に行って薬を処方してもらい、鬱との戦いが始まりました。
――当時、周囲の人から、「こうしてほしかった」ということはありませんでしたか。
「どうしてほしい」という以前に、たぶん、接してほしいというところまで意識がいかないし、周りの人が優しくしてくれたからつらさが軽くなるという類のものではないんですよ、原因がわからないつらさだから。特に重度の状態にあるときは何をやっても、何を言ってもダメ。僕はまだ、仕事に出ることができましたから、レベル的には“中度”なのでしょう。だから、自分自身、「どこかで抜けたい」という気持ちがずっとありました。だってつらいのは嫌ですし、治るものなら元の楽しい場所に戻りたいと思っていたんで。
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