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Scene.42 本屋から、LOVE&PEACE!

高円寺文庫センター物語㊷

梅雨ど真ん中のこの日、晴れた!

イベントに力を入れる本屋としては、集客に影響するのでお天気が気になるあまり、天気予報に詳しくなっていた。

浅草キッドさんの二度目のサイン会を行った日の、前後三日は天気予報に雨マークがない日はなかったが、大事な時の晴れ男と、自分に変な自信を持った。

「店長。また来ちゃいましたよ!

今日も、がっつり売りましょうね。よろしくお願いします!」

のっけからパワー全開で押してくる、玉袋筋太郎さんに初っ端から圧倒される。

「店長。今日もまた、よろしくお願いします」

そして水道橋博士さんは、いつものようにクール。昨年のサイン会から、文庫センターの常連さんになっていただけた博士さんはなんか眩しい!

「さあ、みんな並んでくれているね!

じゃ、店長。サイン会と行きますか」

ボクは生まれが洗濯屋の小倅なので、子供の頃から店に居て接客の基本は愛想だと心得るようになっていた。ところが、浅草キッドのお二人を見ていると愛想に加えて、お客さんの心をわしづかみにするアッピール力に唖然とするばかり!

しかも場を仕切る有様は、大変なプロデュースぶりだなと感じ入っていた。

「店長。

なに、陶然とした表情で眺めているんですか?」

「あ、後藤田さん。

文藝春秋さんのお蔭で、二度目のサイン会ができましたよ。感謝、感謝です!」

そして、浅草キッドのお二人にまたも魅せられた件を話すと。

「なに言っているんですか!

店長だって、キッドさんに引けを取らないですよ」

2015年の文庫センター跡。右端の壁面にメンボが貼られ、左端の大ガラスに伊香保通信が掲示され、ぐるりをサイン会のお客さんが並んでいた

「いや、存在感が違うってば!

やっぱり名うての芸人さんは、会った瞬間からプロ根性が発散しているって」

100名を突破したサイン会。キッドさんの『お笑い男の星座2(私情最強編)』文藝春秋刊は、昨年にサイン会をしたロッキング・オン刊の『発掘』とともに、売行き良好書の定番商品になった。

サイン会の勢いのままに、トークショーをと考えていた。高円寺阿波踊りを控えたこの時期は、高円寺界隈どこの公共施設も阿波踊り連の練習で予約が取れないのが残念!

 

アタマの中には、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が流れる。

Scene.42 本屋から、LOVE&PEACE!

 

「あ、大原さん。いらっしゃい!」

「いつの間にか、ドラッグクイーンものが増えているわね。

そういえば、店長とは一度も一緒にジンも飲まずに、ソーロングだわ。もね、ライター断念。ギブアップ!

潮時・・・・クニに帰ることにしたの」

「え、いきなり!

だって先日、友人のフリーライターが出版業界を断念してクニに帰ったんですよ。雑誌系ライターの彼は、次々と稼ぎ先が無くなって質屋生活も限界だったそうなんです」

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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