引かれる小泉今日子と守られるユーミン、女性芸能人の政界進出はヌードより恥ずかしい
出馬はさすがに考えにくいが……
■女性に支持される2人だが、こうも違うのは「育ち」のせい?
そういう意味でやはり「育ち」というのはその人の本質に大きな影響を及ぼす。最近、小泉とは逆のベクトルでそのことを実感させたのが松任谷由実の一件だ。発端は、安倍晋三首相の辞任表明について彼女がラジオでこう語ったことだった。
「テレビでちょうど見ていて泣いちゃった。切なくて。私の中ではプライベートでは同じ価値観を共有できる。同い年だし、ロマンの在り方が同じ。辞任されたから言えるけど、ご夫妻は仲良しです。もっと自由にご飯に行ったりできるかな」
これに対し、白井聡というアベガーの大学講師が噛みついた。
「荒井由実のまま夭折すべきだったね。本当に、醜態をさらすより、早く死んだほうがいいと思いますよ。ご本人の名誉のために」
と、フェイスブックで悪態をついたのだ。さすがに炎上して削除することとなったが、その後も「偉大なアーティストは同時に偉大な知性であって欲しかった」と捨てゼリフを吐くなど、懲りた様子はない。
ちなみに、この男、飲み会の席でいきなり「あーー、革命してええーーーー!」と口走ったりするらしい。ni_kaという詩人のnoteに紹介されていたこのエピソードを見たとき、わりと得心した。要するに、安倍首相やユーミンといった権威に噛みつくことで「革命ごっこ」を楽しんでいるのだろう。
一方、ユーミンが体制側なのは当然の話だ。生まれたのは八王子の大きな呉服屋で、自分専属のお手伝いを含めた80人くらいの使用人がいる環境で育った。そこで格差などの世の真理を自然に学び、高校時代には都心の社交場に出入りして洒落たセンスを身につける。歌手デビュー後、その創造性とパフォーマンス力で長年、トップクラスに君臨してきたことはいうまでもない。
世のトレンドとの相性もよく、バブル期にはバカ売れして「あたしが売れなくなるっていうのは、都市銀行が潰れるみたいな時代になるっていうこと」という勝ち組ならではの発言もした。作編曲家の松任谷正隆と公私ともに安定したパートナーシップを築けていることも、家庭ひいては国家への信頼感をさらに強めたのだろう。だからこそ、時の権力者と「同じ価値観を共有できる」「ロマンの在り方が同じ」ということにもなり、その退場をわがことのように哀しんだのだ。
その点でいえば、小泉もかつては世のトレンドとの相性がよかった。というより、そこが最大の売りで、バブル期には「CMの女王」とまで呼ばれた。そんな人に「共産党から出馬」という話が出て来たのだから、ファンは戸惑うだろう。せめて、吉永小百合のように、反戦詩の朗読といった女優的振る舞いのなかで行なうならまだしも、女性芸能人の政界進出はヌード以上の恥ずかしさなのだ。
なお、小泉はまだヌードにはなっていない。何度も噂はあったが「脱ぎそうで脱がない」女性芸能人として、ファンの興味をそそってきた。それゆえ、選挙にも「出そうで出ない」スタンスをとり続けるのかもしれない。ただ、今は状況が違う。不倫を選んで大手事務所を飛び出したほどだから、何が起きても不思議はないだろう。
とはいえ、このところ現実味を帯びてきた衆院の解散総選挙への出馬まではさすがに考えにくい。が、応援演説くらいならありえるのではないか。これなら、恥ずかしさもセミヌード程度といったところだ。
文:宝泉薫
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