【新内閣下でどうなる?】「少人数学級」曖昧な目的と実現への課題
第43回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
■政府も教員もWGも「少人数学級」に向かっているが…
「少人数学級」を求める声は日増しに高まってきており、政府・文科省も現時点では積極的な姿勢を見せているように思える。
9月8日、教育再生実行会議の少人数学級の実現について集中的に議論する初等中等教育ワーキング・グループ(WG)の初会合が開かれ、来年度より、できるところから少人数学級の実現に取り組むことで一致した。さらに、来年度予算編成の過程で丁寧に検討することを求めた合意文書までまとめている。
WG初会合での議事の様子を、佃和夫主査(三菱重工業/特別顧問)は「少人数学級化が喫緊の課題。日本の40人学級は多すぎて、不登校の児童生徒などにとっても人数が壁になっている。少なくとも早期に30人か、できれば20人を目指していきたいというのが、平均的な意見だった」と説明している。WGメンバーの誰もが、少人数学級の必要性を認めているようだ。
教員も少人数学級を望んでいる。『教育新聞』が実施した意識調査の結果が8月13日付の同紙で発表されているが、回答のあった公立学校教員の96.6%が少人数学級の実現を求めているという結果だった。残りの3.4%は「どちらとも言えない」との回答であり、「反対」は1人もなかったという。
少人数学級を望む理由として教員からは、「子ども一人ひとりに目が行き届く指導ができる」や「感染防止対策」、「業務量の負担軽減」などの声が多かった。
「児童生徒の実態や課題に応じた指導や、児童生徒や保護者の状況に対応できる時間の確保、授業準備、評価などの過剰な負担の軽減により、よりよい授業づくりの準備もできる」と答えている特別支援学校教員もいた。それは特別支援だけでなく、通常学級においても同様のメリットが得られるはずだ。
■少人数学級のゴールは学力なのか
これと、先のWGでの姿勢にはズレもあるようだ。WGでは、「データの取得が第一だ。少人数指導や少人数学級が教育格差の解消に寄与することをきちんと実証して、さらに強力に進めるためには、全国学力・学習状況調査(いわゆる全国学力テスト)などの活用も併せて必要ではないか」との指摘があったという。
少人数教室を導入したことでの、目に見える効果が必要というわけだ。いま流行りのエビデンスである。そのために、全国学力テストの成績で判断する、ということらしい。少人数学級導入の効果を、学力の向上で測ることを想定しているようだ。
では、教員は少人数学級の導入で実現が期待できる「目が行き届く指導」や「よりよい授業づくりの準備」によって、全国学力テストで測れるような学力の向上を目指そうとしているのだろうか。
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