【最終回】忘れられない「美女ジャケ」サイドストーリー【美女ジャケ】
【第17回】美女ジャケはかく語りき 1950年代のアメリカを象徴するヴィーナスたち
■300人以上の美女がいたら相手をするのも大変だ
レコード本などで見て探したものもあるが、圧倒的に多いのは、レコ屋の棚でカツカツ、ジャケを見ていって出会ったものだ。ジャズの老舗レーベル、RIVERSIDEレコードからリリースされた作曲家別のアンソロジーも、偶然みつけた。
これは3枚で一組になることを知らずに新宿のディスクユニオン・ジャズ館で、2枚をみつけて買った。胴体と脚。
下の写真のような組み合わせで、すんなり繋がっているようには見えなかったがこういうものだろうと。(01)
となると頭が気になってしょうがない。もうインターネットは普及し始めていたが、そんなになんでもWeb上に情報がある時代ではなかった。
ある日、頭部発見! なんか違うぞ! かなり違う……服が合ってないじゃないか……それがこちらの写真。(02)
ジャズ本などはあまり買わないので本屋で立ち読みして調べた。
じつは、これはふたつのシリーズになっていることが判明。その正解の組み合わせがこちらの写真。RIVERSIDEレコードのオリジナルは当時高かったので、Fantasyレコードの再発盤でいいからと必死に探して全6枚を集めた。(03)(04)
やっぱ、赤のワンピースのほうがそそるよねぇ、なんて思いながら眺めたが、集め終わってみるとそれほど感慨はなかった。「コレクターの憂鬱」とはこういうものなのだ。
ただし、このシリーズは音楽のほうは素晴らしく良くて、損した気はしなかった。でもヤフオクで何回も出品されるようになり、しかも3枚セットとかで出る。クリックして落札すれば、簡単にコンプリート……なんてまったく面白みのない時代になってしまった。
なぜ、これほど美女を追い求めたのか、自分でも説明はむずかしい。音楽が良くて、しかもジャケが素敵だったらお得でしょう? 的な感覚で始まったと思うが、集めるほどにジャケにも厳しくなり、勢いで買ってしまったものも美女に思えなくなったり、写真やデザインのセンスがないものは処分してきた。
古典的な女性美が好きで、ほとんどは1950年代から60年代前半までのもの。まぁ、趣味としてコンサバ系美女が好きということなのか。
ただ美女ジャケ収集の最後のころは、美女の顔の大写しのジャケには興味なくなり、というかそれはあまりに多いのでちょっと辟易して、シチュエーションものに移行していった。
『Venus on Vinyl 美女ジャケの誘惑』に掲載したなかで、ほぼ最後に購入したのが、ラウンジ・ピアニスト、ジェリー・カレッタの「Beautiful Music Together」だ。これが勝手に名付けるところの「シチュエーションもの」である。
木の根元で寄り添う恋人たち。ボートが手前に写り、ピクニック気分を盛り上げている。1957年の作品だが、もっと古く見えるのは、製版技師が写真に着彩して、古い絵はがきで言うところの「人工着色」のように発色が良いからだ。
美女か否かというよりも、なんともノスタルジックで幸せな光景。あぁ、結局はこういうものを自分は探し求めていたのではないか……エロいものも好きだけれど、一番は「愛」だよね……なんて再確認すれど、そこに対象はなし。
買ったり売ったりしながら精選していって、最後におよそ300枚の美女ジャケを手元に置いてコレクションも終了。数で一番のコレクターになりたいわけではないから、もう充分だし、300人以上の美女がいたら、相手をするのも大変だ。
すっかりレコード棚に収まってしまった彼女たちも、いつかまた自分のことを思いだしてネ、なんて思っているのかもしれない。