忘れたころにやってくるものは、もうはじまっている【12年前の今日:リーマン・ブラザーズ経営破綻】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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忘れたころにやってくるものは、もうはじまっている【12年前の今日:リーマン・ブラザーズ経営破綻】

◼︎常に強いものに従うことで私たちは何を失い続けているのか

レイテ島に再上陸を果たすマッカーサー/パブリック・ドメイン

 

 次の総理大臣も同じシステムのナカで、ウラで決まる時、口だけは勇ましい若手中堅政治家も、親のコネで入った会社のサラリーマンの本質を露わにする。われ先と勝ち馬に乗る。野党は野党でおこぼれを拾いにいく下請け根性丸出しだ。一握りの長老たちが利益配分ゲームで楽しく遊んでいるだけの茶番で、事実上の超長期政権が続く。アメリカ大統領選挙をどれだけ謀略史観で見ても、謀略前提の中国共産党の党内闘争を見ても、こんなイージーな手法がまかり通る国は世界になかなかない。これはそうとうに、なめられている。やらずぼったくりとはこのことだ。

 世界に例の無い珍妙な光景の数々をテレビで見ることができる。数多の不祥事責任論も、政治的結果に対する議論も総括もないままチャラになった。国家指導者、政治エリートたちはこんなにも軽く、薄く、安くなった。

 軟弱化をすすめるジャパンは止まらない。鉄拳制裁はおろか、怒鳴りつけることすら犯罪だ。政治家に質問するのは子供記者たちだ。体調不良の診断書一枚で何でもできる。相撲部屋、電通、宝塚はもういない。古き良き体育会は遠い昭和の思い出の彼方だ。表面だけが軟弱化し、目に見えない狂暴と残酷が深く静かに潜航する。DVはマンションのドアの向こうにあり、うかがい知ることはできない。つらい仕事、安い仕事は下へ下へと流れ、ブラック企業は地下水流に潜る。街を半グレが支配する。一人暮らしの老人に容赦などせず、獲って喰らう。養護施設の中は、北朝鮮より遠い。

 次の総理大臣がすでに言っている。まずは自助努力だと。他人に頼るな、甘ったれたことを言うな、自分で頑張れと言っている。ダグラス・マッカーサーは「日本人はまだ12歳の少年だ」と言って、畏くもこの国をアメリカの養子としてお守りになり、育ててくださった。少年が高齢者となったいま、自助せよとは、養父に命をお任せしているジャパンそのものに対するメッセージでもある。 

 自分の国は自分で守れと。民が国を守るとイキっても、国は民を守ってはくれない。だから平民は空っぽの財布でも、自分で守る覚悟が必要だ。高度福祉社会が訪れることは100年はないだろう。国家百年の計がないからだ。寧ろ世界は無法地帯に逆行する気配すらある。

 赤の他人に全財産と命を預けて、思考を停止していたら生存できはしない。信じていたら騙される。寝ていたら食われる。メディアを信じない。トレンドを後追いしない。リスクを分散する。ましてや、国(もちろん外国も)をあてにしないことが重要だ。ケータイを無くしたら、全財産と全人間関係を失う緊張感を持とう。

 1945年8月をもって、日本人は現人神を、天皇陛下からマッカーサー元帥に乗り換えた。権力にからきし弱い、権威にめっぽう弱いのが村人ジャパンの特徴だ。危機の最終段階、生存をかけた瞬間においては、あきらめと変わり身の早さがモノを言う。良くも悪くも忘却力と転向力で生存してきた。新たな占領者が現れても、きっと大丈夫だろう。幼児と老人のはざまで、彷徨うジャパン。引退することの無い亡者たちがいまだ国家・企業において人事を握るジャパンにおいて、世界規模の金融危機など、たかが天災の一種に過ぎない。

 老いはからだと頭を鍛え、若きは失敗を繰り返して精神年齢を向上させよう。来週の月曜日、敬老の日、そして火曜日、秋分の日に次の世界金融危機が訪れても、そこは持ち前の思考停止と自助努力で乗り切ろう。

 

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猫島 カツヲ

ねこじま かつを

ストリート系社会評論家。ハーバード大学大学院卒業。

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