地下鉄日比谷線・東武線直通の座席指定列車「THライナー」に乗る
スタートから3か月、「密」にならない通勤ライナー
■霞ヶ関駅を出て1時間15分で終点の久喜駅に
三ノ輪駅を出てしばらくすると、外が明るくなる。地下から地上に出て高架線へ。ふと左手を見ると、JR常磐線の電車が並走していた。南千住駅を通過すると右手下に隅田川貨物駅のコンテナ車が見える。鉄道ファンなら心躍る車窓が展開する。隅田川を渡り、右奥から東武線の線路がはるか下で合流してくると北千住駅に到着した。事前の放送通り乗務員交代のための運転停車でドアは開かない。
いよいよ東武線に乗り入れる。ホームを出ると階下に位置していた浅草方面からやってきた東武線の線路と同一平面上になり複々線の線路を進み、すぐに荒川の鉄橋を渡る。窓外をよく見ると、複々線の内側、日比谷線の延長線上にあたる各駅停車用の線路を走っている。小菅、五反野とホームすれすれのところを通過するので、各駅停車用の線路であることは一目瞭然だ。どこかで外側の急行用線路に転線しなければ追い抜きはできないしスピードもでない。どうなることかと気になっていたら、梅島を出て、西新井駅の手前でようやく外側の急行用線路に移った。これで、先行する各駅停車をさっそうと追い抜くことができ、スピードもぐんぐん上がった。
急行の停車する西新井、草加は通過。特急並みのスピードで走るのは爽快である。すれ違う電車は、東武の各種通勤電車はもちろんのこと、半蔵門線経由でやってくる東急の車両、東京メトロは日比谷線と半蔵門線の車両、さらには特急「りょうもう」「スペーシア」と実に賑やかだ。竹ノ塚付近で高架工事の様子をみるほかは、延々と高架区間が続いていく。
上野駅を出て27分後、ようやく新越谷駅でドアが開いた。上野駅で乗って来た夫婦は、ここで下車、次のせんげん台駅、春日部駅に停車し、周りを見渡すと、再び私の乗った車両は私だけになっていた。東武線の各駅では下車のみが許され、乗車することは不可なので、もう乗客が増えることはない。各駅のホームでは、誰もがTHライナーを迷惑そうに眺めている。空いているのに乗れないのでは鬱陶しいのだろう。
東武動物公園駅を出ると、複線の東武日光線が分岐する。これまではマンションや一戸建てがぎっしりと立ち並んでいたが、沿線は急に緑が増え、広々とした田園風景が展開する。小雨が降る空模様だったので、薄暗くなってきた。線路際は田圃が多く、彼方に住宅が並んでいる。都心の日比谷線を走っていたのと同じ電車から見る車窓とは到底思えない。1時間乗りとおすと、こんな長閑な風景の中を走るとは誰が想像できるだろうか?
霞ヶ関駅を出て1時間15分で終点の久喜駅に到着。電車はしばらく停車した後、ホームの先にある引き上げ線へ回送されていった。伊勢崎線は、電車の本数こそ減るものの、まだまだ先へ続いている。さらに隣にJR宇都宮線(東北本線)の駅もあるので、地の果てにやってきたような終末感は微塵もない。さて、来た道を戻るか、JRに乗り換えて都心に戻るか、ルートは複数あるので迷うところだ。
THライナーは、東京メトロと東武という2つの鉄道会社をまたいで運転されるので、指定料金は680円(せんげん台までなら580円)とやや割高だ。東武東上線内だけを走るTJライナーが370円、京王ライナーの410円と比べると、その割高さは際立っている。また、上野駅から乗ると、久喜駅までは680円かかるけれど、上野駅から浅草駅まで銀座線を利用し、特急「りょうもう」に乗りかえれば320円(午後割、夜割)で済む。この列車は特急専用車両なので快適さではTHライナーと比較にならない。トイレもあるし、座席にテーブルもついている。しいていえば、コンセントがないのが欠点であろうか?
また、上野駅からJRの普通列車グリーン車に久喜駅まで乗れば、平日のグリーン料金は780円だけれど、土休日は580円とTHライナーよりも安くなってしまう。このあたりに、土休日のTHライナー苦戦の要因がありそうだ。
といっても、運行開始から3カ月ほど。まだまだ周知不足は否めない。もう少し様子を見なければ何とも言えないけれど、最悪、平日のみの運転になるかもしれないと感じた次第である。
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