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多くの人が勘違いしている? 部活が「ブラック」になる理由

部活が「ブラック」になるのはなぜ?(前編)~昭和のやり方は通用しない 

◆リスク伴う「一発学習」

 その対極にあるのが「一発学習」。別名「恐怖学習」とも言われる。
 指導者は生徒に対し怒鳴ったり、時には鉄拳を振るい圧力をかけ「監督が恐いからやるしかない」と生徒を奮起させる。ここがダメ、あそこを直せと怒鳴る、主に禁止型の指導方法で、脳内の線条体の動きが高まらない。

 とはいえ、一発学習はそのような強い刺激によって奮起したことが選手の記憶に強く残るため、一時的にパフォーマンスが上がる。つまり、即効性が高い。まさに「一発」で効果が出る。例えば、「3年間で結果を出したい」とか「3年後までに全国大会出場を」と目論む勝利至上主義の大人にとって、一発学習は最も手っ取り早い方法だ。

 ただし、永続性に欠ける。この指導を長く受けた生徒は、圧迫されたことがトラウマになりバーンアウトしやすい。結果として、強く指示命令されたり、怒鳴られたり、たたかれるような強い刺激なしでは物事に取り組めなくなるというリスクを併せもつ。

 前述した大阪市立高校のバスケット部員の自殺は、一発学習に頼りすぎた指導によるもっとも不幸な事件といえる。

 元顧問は事件発覚後、教育委員会の聴取に対し、こう答えている。
「たたくと、一気に伸びたり、精神的に強くなる選手がいた」

「でも強豪校は厳しくしないと」「厳しさがないと世界と戦えない」といった声もある。だが、一発学習でコーチに言われた通りのことしかできないアスリートが世界と戦えるだろうか。五輪や強豪を目指すのであれば、自ら考え主体的に取り組める生徒を育てなくてはならない。つまり、青山学院大学の原監督が実践しているような、強化学習を徹底させなくてはならない。

 昭和のやり方は、もう通用しないのだ。

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島沢 優子

しまざわ ゆうこ

フリーライター。筑波大学体育専門学群4年時に女子バスケットボール全日本大学選手権優勝。 卒業後は、広告制作会社勤務や豪州、英国留学を経て、日刊スポーツ新聞社東京本社でスポーツ記者として、サッカー、ラグビー、水泳、バレー、バスケットボール等を取材。1998年よりフリー。『AERA』等で子育てや教育関係、ノンフィクションを中心に執筆し精力的に活動している。著書に『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(小学館)、『桜宮高校体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)など。


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