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【9年制学校?】「義務教育学校」増加で教員の働き方は改善されるか

第44回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

義務教育学校

■「義務教育学校」が増加傾向にある

 義務教育学校の数が増えてきている。8月25日に文科省が公表した「学校基本調査(速報値)によれば、昨年度より32校が増えて、今年度は126校になっている。
 小学校課程から中学校課程までの義務教育を一貫して行うのが義務教育学校であり、2016年4月に学校教育法の一部が改正・施行され、新たな校種として位置付けられている。16年度には公立の義務教育学校が22校だったが、翌17年度には国立で2校、公立で46校の合計48校だった。それが126校になったのだから、急速に増えてきていると表現しても差し支えないだろう。

 学校教育法の一部改正・施行に先立って、文科省は「義務教育学校制度(仮称)について」という資料を2011年に作成している。そこで義務教育学校について、「現行の小・中学校の課程に相当する課程を併せ持ち、義務教育として行われる普通教育を一貫して施す9年制の学校を想定している」と述べている。
 そして、中央教育審議会答申『新しい時代の義務教育を創造する』(2005年10月26日)の指摘を掲げている。中央教育審議会の答申で指摘を受けて、義務教育学校を設立しようとしているというわけだ。言うまでもなく、答申のベースをつくったのは文科省である

 答申は「義務教育を中心とする学校種間の連携・接続の在り方に大きな問題があることがかねてから指摘されている」ので制度の見直しが必要だ、としている。そして次のように続いている。
「また、義務教育に関する意識調査では、学校の楽しさや教科の好き嫌いなどについて、従来から言われている中学校1年生時点のほかに、小学校5年生時点で変化が見られ、小学校の4~5年生段階で発達上の段差があることがうかがわれる」
 だから、「設置者の判断で9年制の義務教育学校を設置することの可能性やカリキュラム区分の弾力化など、学校種間の連携・接続を改善するための仕組みについて種々の観点に配慮しつつ十分に検討する必要がある」というのだ。

■目的はやはり学力UPと効率化

「従来から言われている中学校1年生時点の」というのは、いわゆる「中1ギャップ」を指している。
 小学校から中学校へ入学したとき、環境の変化についていけず、学習に遅れが生じたり、いじめが起きたり、そのために不登校になったりする現象のことを指すのが「中1ギャップ」だ。小学校と中学校の垣根をとりはずせば中1ギャップを無くせる、というのが義務教育学校をつくる、一つの理由である。
 だが、この理屈ならば、高校へ進学したときの「高1ギャップ」や大学へ進んだときの「大1キャップ」も無視するわけにはいかなくなるだろう。
 つまり、義務教育学校の設置が中1ギャップを理由にするなら、小中一貫だけでなく、小中高大まで一貫してもおかしくないことになる。もちろん、それは現実的ではない。

 義務教育学校が論議されているとき、いじめや不登校の問題解決ということも言われたが、むしろ注目されたのは「学力」の面である。小学校6年間と中学3年間で別々に指導していたのでは「効率」が悪く、これを9年間を一貫した流れのなかでスケジュールを組み立ててれば、「効率的な指導」が期待できる。それだけ、学力向上にもつながるとみられている。

次のページ大切なのは教員の働きかたと数である

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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