【群馬「地名」ケンミン性】勅令によって「車」を「群馬」へ——高崎と前橋の覇権争いの歴史《47都道府県「地名の謎」》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【群馬「地名」ケンミン性】勅令によって「車」を「群馬」へ——高崎と前橋の覇権争いの歴史《47都道府県「地名の謎」》

【全国地名由来辞典】県や町の名前から郷土のドラマをひもとこう!_群馬県


 日本の地名は世界でも稀に見るほどバリエーションが豊富。
 地名の由来を探ると、多様な地形、自然を愛でる表現性、ふるさとを思う民俗性など、この国の原点が見えてくる。
 読者のみなさんの故郷はどちらですか? 地名は・・・
 日本人ならなぜか初対面でも話が弾む出身地・県民性・そして地名雑学‼️
 ようこそ! 地名の奥深い世界へ‼️


■「前橋」と「高崎」の戦い

幕府の命により井伊直政が築城した高崎城。乾櫓のみ現存。提供/ググッと群馬写真館

《群馬県の由来》
勅令によって車を群馬に改める

 現在の群馬県には古来、上毛野君豊城入彦命(かみつけのきみとよきいりひこのみこと)の後裔にあたる射狭君(いさのきみ)が、雄略(ゆうりゃく)天皇の御世に乗輿(じょうよ)を進上して「車持公」の姓を賜ったことに由来する「車評(くるまのこおり)」(「評」は大宝律令によって「郡」となる)と呼ばれる地域があった。
 これが和銅6(713)年に出された好字令以降、国・郡・郷名はその土地にあった漢字二文字で表すこととされたため、「車郡」が「群馬郡」に改められ、現在の県名につながっていく。
 また、高崎と前橋は県庁所在地を巡り争った歴史がある。


《地名の由来》

◉吾妻(あがつま):亡き妻の弟橘媛を偲ぶ

 古代より「 吾妻郡(あがつまのこおり)」として知られる。
『日本書紀』によれば、東征の帰路、都に帰ろうとした日本武尊(やまとたけるのみこと)が、この地で亡き妻の弟橘媛(おとたちばなひめ)を偲んで「 吾嬬(あづまはや)」(あぁ、わが妻よ)と3度嘆いたことが地名の由来とされる。

◉伊香保(いかほ):榛名山の姿を示す

 温泉地として有名な伊香保。
 険しい山容を意味する「厳峰(いかつほ)」からきた地名で、『万葉集』には「伊香保ろの~」から始まる歌が残る。
 また、上州名物として有名な「雷(いかづち)」「燃える火(ほ) 」に関連があるという説も知られる。

◉高崎(たかさき)成功高大から「高崎」

 徳川四天王のひとり・井伊直政が当地の名を「松ヶ崎」に改めようとした際、信頼を置いていた住職から「成功高大(せいこうこうだい:「高大」とは「高くて、大きい」の意味)」の意味をとって「高崎」を勧められたという。
 また城地を決めるのに鷹を空高く飛ばして決めたことが由来という説などがある。

◉前橋(まえばし)古くは厩橋と呼ばれた

 当地にかかっていた橋を「駅家(うまや)の橋」と呼んだことから、中世までは「厩橋(まやはし)」と呼ばれていた。
「厩」を「前」として「前橋」に改められたのは、慶安年間(1648~52)とされている。

 

■草津は「くさい?」 温泉由来の地名

◉名湯の証とされる硫黄のにおいが要因

 日本三大名湯のひとつに数えられる「草津」の地名は、硫黄成分の強い温泉の独特なにおいから、古くは「クサミズ」といったそうで、それが次第に転訛して「クソウズ」となり、「草津」の文字が当てられたといわれる。
 ほかにも、大般若経にある「南方有名是草津湯」という一条を由来とする説も知られている。

下呂、有馬と並び日本三名泉に数えられる草津。温泉大国である日本では、湯や泉、温がつく地名が多くある。

(2020年一個人5月号から

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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