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京都の比ではない。愛知県は神社・寺院の数が日本一だった!

名古屋地名の由来を歩く【知られざる寺院の魅力③】

なぜ愛知県に神社や寺院が多くあるのか

 これまで愛知県にこれほど多くの神社や寺院が多くあることに多くの人々が気づいてこなかった。いったい、これにはどのような背景があるのか。残念ながら、この問いに答えてくれる研究物は見つからなかったため、私の考えを示すことにする。

 まず神社だが、これには宗派なるものが明確にあるわけではなく、あえていえば「神社本庁(神本)が九九パーセントを占めているため、一括して考える以外にはない。まず考えるべき点は、奈良県(1387)、京都府(1764)に比べて、圧倒的に新潟県、兵庫県、福岡県、愛知県、岐阜県などが多いということである。

 ここには二つの理由があると考えられる。

 一つは、これらの地域には奈良・平安時代に先駆けて多くの文化が栄えていたことである。私たちは日本の歴史をともすれば奈良・京都を起点にして考えがちだが、それ以前から日本列島には各地に多くの人々が住んでおり、自然発生的な信仰の生活を営んでいた。むしろこれらの地域には奈良・平安以前の文化が広がっていたと考えていい。

 二つ目は、これらの地域は都からある程度離れており、中央権力が及びにくかったことである。奈良・京都は政治の中心であることから、権力が神社などを統括していった。そのため大きな神社は数多くあるものの、小さな神社は統合される運命にあったと考えられる。

 それにしても、なぜこれほどまで愛知県には寺院が多いのだろうか。実際名古屋やその周辺を歩いてみると、とにかくどこに行ってもお寺が多い! 鳴なるみじゅく海宿の周辺にはわずか100mのエリアに数個の寺院が固まっている。とにかくどこへ行ってもお寺がある。

 これには尾張徳川家が寺院を保護したことが大きい。江戸時代には徳川家は基本的に浄土宗を推奨して保護したことはよく知られている。浄土宗の寺院のいちばん多いところは京都府(567)で、二番手に愛知県(553)が上がってくる。(数値は『全国寺院名鑑』による)

 名古屋では東区にある建中寺(浄土宗)が有名で、尾張徳川家の菩提寺として代々の信仰を集めた。建中寺の山門は200年以上前に再建されたものだが、一見して江戸で将軍の菩提寺として保護された芝の増上寺(浄土宗)の山門を彷彿とさせる。

建中寺

『名古屋地名の由来を歩く』(著・谷川彰英)より構成〉

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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  • 谷川 彰英
  • 2011.10.08