政治家・官僚・国民全体に「デジタル化の必要性」が真に認識されていない
人類は科学技術で進化するしかない。突然変異による進化など待っていられない。
■霊肉分離の兆候?
私は、最近の日本において、若い人々の間で、精神と身体の分離傾向が出ていると思う。
若い世代の草食化とか非婚化が指摘されている。その前から、引きこもりやニート現象はあった。今の若い人々は昔の若い人々よりも小食のように見える。
非婚化は少子化の最大原因であるが、非婚化の流れは止まらない。家族を個性あるかけがえのない人生を生きる個人の集まりとは考えずに、生活上の便利な道具と無自覚に想定している人間と家族形成したら、人生を潰される。その恐怖から非婚化は生まれている。永田夏来の『生涯未婚時代』(イーストプレス、2017)や荒川和久の『超ソロ社会—「独身大国・日本」の衝撃』(PHP、2017)が述べるように、社会は「個人化」しつつある。そのほうがラクだし快適なのだ。
草食化という性交回避傾向についても、若い人々が正直にラクで快適な方向に向かっているからこその現象なのではないか。自分の肉体でさえ面倒くさいのに、なにをわざわざ他人の肉体まで。
人間の悩みは肉体から生じる。肉体は厄介だ。ラクでもなく快適でもない。疲れる。痛くなる。怪我する。病気になる。空腹になる。排泄する。便秘する。女性は生理になり、生理痛もある。毛は生えてくる。汗は出る。経年劣化するし加齢臭はある。有機物は腐るし汚い。
自分の身体という有機物を支えるために、人類は労働し、食料を求め、再生産のために性交し、出産し、苦労して養育し、食べ物を調理し暖を取るための燃料を探した。この肉体があるために人類の苦労は尽きなかった。戦争も起きた。
そのかわりに肉体があるゆえの喜びもある。その最大のものは食欲だ。しかし、最近の若い人々は、片手でスマホを使うために、食事は片手で掴んで食べることができるもののほうがいい。ついでに、噛まずにすむものがいい。
食べ物のほとんどは糞便となる。合理的に考えれば、宇宙食のような、必要栄養素が過不足なく入り、排泄されるものがないようなものが理想の食事だ。ラクで快適だ。ならば、身体の機械化が最も合理的だ。
ともかく、2020年現在で、若い世代の間で、従来の人間のありようとは違う方向に行く兆候が見えている。人間の身体を機械と見る心理からサイボーグになりたい欲望を人間が持つまでは、非常に近い。いずれ、その欲望は実現するだろう。
■女性こそICT スキルを学ぼう
9月22日朝刊の「日本経済新聞」の第一面の大きな見出しは「再教育でデジタル人材に」である。欧米では、デジタル人材を育てるリカレント教育への公的支援が広がっている。
今回のコロナ騒ぎで、営業制限を迫られた外食産業や小売系産業や接客サービス部門で労働力過剰が生じた。それで、フランスでは、デジタル系や医療などの職業訓練に153億ユーロを充てる。アメリカでは、デジタル化に有益なスキル更新を促すために、専門技能訓練を受けた個人に4000ドルの税額控除を与える法案を超党派で提案した。
日本でも2017年度から社会人がデジタル技能の訓練を受けると、費用の最大70%を公費助成する制度がある。個人でも企業でも申請できる。経済産業省のサイトをチェックしてください。役所は、税務署でもどこでも国民に有益な情報は知らせないのが常なので、自分で調べよう。
コロナ危機による外出自粛のために雇用が収縮した分野は、女性を多く雇用していた。それも非正規雇用が多かった。だから、失職した非正規女性はデジタルスキルを身につけることが、今現在と近未来における稼ぐ道であるし、シンギュラリティ後の世界に適応できる道だ。
確かに、デジタル化やAI化やロボット化は人間の雇用を激減させる。今のところは、人間以上の生産性を持ち、かつ安価でコストがかからないAIやロボットの開発ができていないので、人間の雇用が保たれている。しかし、これも時間の問題だ。ほとんどの人間は「無用者階級」になる。
しかし、デジタル化やAI化やロボット化は、人間を生活資源獲得としての労働から解放するものでもある。デジタル化をコロナ危機によって起きた災難とか、人類を脅かす現象だと決めつけずに、積極的に関わっていかないと、未来は怖いだけのものになる。