織田信長こそ権威主義的な戦国時代の模範生? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

織田信長こそ権威主義的な戦国時代の模範生?

大間違いの織田信長③信長は権威をどう使いこなしたか?

権威で下剋上

 気付きましたでしょうか?

 自分の上に一号と二号という邪魔者がいるわけですが、その一号・二号よりも上の斯波家の権威を使って命令を出してもらい、その二人を潰した功績で斯波さんに次のポジションを認めてもらう。自分が一号になるわけです。

 そして斯波さんが邪魔になったら、因縁つけて出て行ってもらう。「ここまで斯波さんに尽くしているのに、その仕打ちですか! ちょっと考え直してくれませんか」ということを繰り返しているうちに、信長と斯波さんの間で利害が対立します。お飾りと、お飾りにしようとする人は、往々にしてこうなります。「私はこんなに筋を通しているのに!」と言っても、お飾りの側からしたら「いやお前のその態度が気に食わないんだよ」となるので、当然です。実際の力関係としては信長の方が強く慇懃(いんぎん)無礼にしていればいいだけの話で、挑発して耐えかねたら暴発して追い出せばいいという、実に簡単な話です。後で詳しく解説しますが、この斯波家を追い出すときも信長は権威を利用しています。

 このように、信長は権威が嫌いとか無視するどころか、人生の前半生二十七歳くらいまでは権威を使うのが滅茶苦茶に上手く、むしろ権威を大事にする人でした。つまり、信長こそ、権威主義的な戦国時代の模範生なのです。

 戦国時代の下剋上の実態は、「下の者が上の者に剋かつ」です。横のライバルや上の邪魔者を倒すには、権威だって使いようなのです。

『大間違いの織田信長』(著・倉山満)より構成〉

明日は『室町幕府十九回目の滅亡?』

大間違いの織田信長④信長は室町幕府を滅ぼしたのか?です。

KEYWORDS:

オススメ記事

倉山 満

くらやま みつる

憲政史研究家

1973年、香川県生まれ。憲政史研究家。

1996年、中央大学文学部史学科国史学専攻卒業後、同大学院博士前期課程を修了。

在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、2015年まで日本国憲法を教える。2012年、希望日本研究所所長を務める。

著書に、『誰が殺した? 日本国憲法!』(講談社)『検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む』(光文社)『日本人だけが知らない「本当の世界史」』(PHP研究所)『嘘だらけの日米近現代史』などをはじめとする「嘘だらけシリーズ」『保守の心得』『帝国憲法の真実』(いずれも扶桑社)『反日プロパガンダの近現代史』(アスペクト)『常識から疑え! 山川日本史〈近現代史編〉』(上・下いずれもヒカルランド)『逆にしたらよくわかる教育勅語 -ほんとうは危険思想なんかじゃなかった』(ハート出版)『お役所仕事の大東亜戦争』(三才ブックス)『倉山満が読み解く 太平記の時代―最強の日本人論・逞しい室町の人々』(青林堂)『大間違いの太平洋戦争』『真・戦争論 世界大戦と危険な半島』(いずれも小社刊)など多数。

現在、ブログ「倉山満の砦」やコンテンツ配信サービス「倉山塾」(https://kurayama.cd-pf.net/)や「チャンネルくらら」(https://www.youtube.com/channel/UCDrXxofz1CIOo9vqwHqfIyg)などで積極的に言論活動を行っている。

 

 

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

大間違いの織田信長
大間違いの織田信長
  • 倉山 満
  • 2017.08.19
大間違いのアメリカ合衆国
大間違いのアメリカ合衆国
  • 倉山 満
  • 2016.07.26
真・戦争論 世界大戦と危険な半島
真・戦争論 世界大戦と危険な半島
  • 倉山 満
  • 2015.03.26