全国ワーストの貧困率、離婚率でも悲壮感がないのはなぜ?《日本の最貧困地帯 沖縄のリアル③》【神里純平】
日本の最貧困地帯 沖縄のリアル③
日本の最貧困地区と言われる沖縄。厳しいデータとは裏腹に悲壮感がないのはなぜなのか。
「豊かさの中にも貧しさがある、貧しさの中にも豊かさがある」
■「全国ワーストの貧困率」に隠れた離島の豊かさ
沖縄県の貧困率が全国1位という不名誉なデータが発表された。
貧困率をざっくり定義するならば、所得が低い家庭が多いということである。
確かに、平均賃金は全国ワースト(最下位)。他都道府県に比べて貧しい家庭が多いという事実は否定できない。またこれまで2回にわたって、「最底辺」とも呼べるような悲惨な貧困の例を紹介してきた。それぞれ「負の連鎖を引きずる貧困」、「高い離婚率と母子家庭が生み出す貧困」といった沖縄に根深い貧困の類型が浮かび上がったことだろう。
しかし、ここではまた違った角度から沖縄の貧困を考えてみたい。
まず、データだけでは見えてこない、「豊かさ」だ。
先に出した貧困率も、私の分析では沖縄本島、特に那覇市などの中心部と離島とでは数値が違う。
というのも離島などは、意外に思われるかもしれないが、補助が手厚い。
例えば本島に渡る際の交通費が大幅に助成される、給食費が無料、漁師の後継問題に対する補助などだ。これには昨今の領土問題の観点から行政としても人が住んでもらわないと困る、という事情があるからだ。
また、離島は人と人との距離が本島とは比べものにならないぐらい近い。そのため苦しい状況にあっても助け合う「ユイマール」(相互補助)という昔ながらの文化が根強く残っている。