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【デジタル庁創設で学校は…?】教育デジタル化では「課題」より「目的」を考えるべき

第45回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-


 オンライン授業の導入、それに伴う端末普及が急がれており、すでにデジタル教科書も存在している。このような変革期を迎えている今、教育のデジタル化について、政府・文科省はどのように捉えているのだろうか。今後、デジタル庁の創設によってあらゆる議論が加速していくと推測されるが、肝心要である「目的」についてはどうなのか。その現状を分析する。


オンライン教育

■「1人1台端末」普及の前倒しは良いのだが…

 全閣僚によるデジタル改革関係閣僚会議の初会合が9月23日に開かれ、菅義偉首相はデジタル庁の創設について「年末には基本方針を定め、(来年1月招集の)次の通常国会に必要な法案を提出したい」と表明した。

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)でリモートワークやオンライン授業が一気に注目されることになり、首相としては政権の目玉政策にしやすかったといえる。
 「デジタル改革」を目指すとなれば、教育も例外ではなくなる。むしろ、政権の取り組みが国民に分かりやすいということで、デジタル化のメインにされる分野だともいえる。
 先の閣僚会議で菅首相は、「デジタル教育などの規制緩和の推進」を指示した。それを受けて会議では、臨時措置として取り入れたオンライン化を後退させることなく定着・拡大していくことが確認されている。

 公立小中学校では、2022年度末までに実現する予定だった「1人1台端末」を今年度末に前倒しして実現することになっている。新型コロナによって長期休校した学校で、オンライン授業が一気に注目されたからだ。
 しかし、文科省の調査では休校中にオンライン授業を行っていた公立学校は、わずか5%にすぎない。オンライン授業をやろうにも、端末などICT環境が整っていなかったことが大きい。だから、1人1台端末の前倒しという流れになったのだ。

■オンライン授業の普及で教室が無くなる?

 だが、一斉休校から学校は再開しているので、オンライン授業のための環境を急いで整える必要はなくなっている。それでも前倒しするのは、新型コロナの第2波、第3波に備えるためなのだろうか。それでは、経済的には「心配ない」と強調する一方で、教育分野では「次に備えろ」と危機感を煽っているようなものである。

 文科省として、オンライン授業を本格的に学校に導入しようとしているのだろうか。そこが、はっきりしない。
 オンライン授業が主体になれば、物理的な学校の存在そのものを問い直す必要がある。授業はオンラインで行われ、子どもたちは自宅で授業を受けるとなれば、学校の教室は基本的に不要になる。文科省・政府は、そういう方向にシフトしたいのか。そこが明確にされていないのだ。
 先のデジタル改革関係閣僚会議の初会合でも「デジタル教育に必要な基盤」とともに「ノウハウの不足」を指摘する声があった。それ以前に「何をやったらいいのか」かが分かっていない。分かっていないのだからノウハウを積み重ねていくのも難しく、「不足」の状態は長く続くことになるだろう。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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