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科学者が考える、武道をやる5つのメリット

武道は精神論…といまだに思っていませんか?

武道は人と戦う術。だが、突き詰めると己の本性や本心を知るための道…、と言われることがある。しかし、体を使うことも事実。精神だけでなく、武道が体に与えてくれる効果を探ってみた。お話をうかがったのは、びわこ成蹊スポーツ大学の高橋佳三さん。

 

■効能その1 肩甲骨と股関節が動くようになる

 イスでの生活にパソコンやタブレットを使った仕事。現在人は、生活の中で大きく動くことが少ない。それが肩甲骨や股関節を固くし、不調の原因となっている。武道の動きは、この二つの部位がよく動くようにならなければ実現できない。最初は固くても、学んでいくうちに次第に柔軟性が回復し、健康的な体になっていくだろう。焦ることなく、無理なく練習していくことが大切だ。
 

■効能その2 体幹部が働くようになる

 肩甲骨周りや股関節がしっかり動くようになってくると、体の動きの土台であり軸となる体幹部の筋群が働くようになる。すると普段の何気ない動きはもちろん、重たい物を運んだり 、素早く動いたりするときも楽になる。腕だけ、脚だけに頼るのではなく、全身の筋が連動するようになり負荷を分散させることができるのだ。すると武道だけでなくスポーツや日常生活の中でも故障しづらくなる。
 

■効能その3 体が動くと自信がつき、心が安定する

 体が動くようになり、技も少しずつ上達して無意識にできるようになってくると、いざというときも「何とかできる」「対処できる」という自信が芽生える。何事にも動じない心、武道で言うところの“不動心”が自然と発生してくるのだ。メンタルトレーニングをやったり、自己啓発本を読んだりして外から強くするのではなく、精神的な安定感が自身の内側から自然発生的に得られるだろう。
 

■効能その4 人間本来の身体の能力が発現する

 現代人は一部に負担がかかる不自然な動きが多くなっている。しかし、対峙する相手との攻守を想定した型、形、式の中には、人が本来持っている能力を最も発現しやすい姿勢や動きが詰め込まれており、結果として人間本来の生体構造に効率的な合った動き、いわゆる「理にかなった動き」が自然とできるようになる。すると無駄な力が抜けて、疲れにくくなるなどの効果が得られるはずだ。
 

■効能その5 柔軟で生涯働く体が育まれる

 武道は力み過ぎると技の威力を発揮できない。初心者の頃はそれが分からず、つい力んでしまう。しかし稽古を重ねるうちに力を使わなくても動けることが分かり、筋肉や腱が柔軟な状態で動かせるようになる。するとさらに動きがしなやかになり、柔軟性が増していくという好循環になる。体が固い人でも負荷の軽い動きを続けていくことで、柔軟で生涯働く体を育むことができるだろう。

『一個人』2017年10月号より〉

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高橋 佳三

たかはし けいぞう

筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科修了、体育科学博士。小学2年から大学3年夏まで野球で主に投手として活躍。博士課程3年次より古武術を学び始める。スポーツバイオメカニクスと武術を通して、人が最大のパフォーマンスを発揮する時の動きや感じ方を研究。

 


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